プレスリリース

2016.11.14

材料強度の源の直接観察に成功! ~転位と粒界の相互作用のリアルタイム観察~ :附属総合研究機構・マテリアル工学専攻 幾原雄一 教授、柴田直哉 准教授ら

材料の強度は結晶粒径が小さいほど向上することが知られており、変形を担う転位の伝播が粒界により阻害されるためであると考えられています。粒界における転位の伝播阻害過程はナノスケールかつ動的に進行する現象のため、これまでその様子を直接観察することが困難であり、粒界が転位伝播を阻害する起源は明らかになっていませんでした。しかし、このような材料強度の結晶粒径依存性は構造材料において普遍的に見られる現象であり、今後の高強度材料創製のためには、粒界の存在が転位運動、さらには材料強度に与える影響を明らかにすることが不可欠です。

東京大学大学院工学系研究科総合研究機構の幾原雄一教授、柴田直哉准教授、及び京都大学構造材料元素戦略研究拠点の近藤隼特定研究員のグループは、TEMを用いたナノスケールの応力印加その場観察を行うことで、運動する転位と粒界の動的相互作用をリアルタイムで可視化することに成功しました。従来、転位の伝播阻害は粒界において結晶方位が変化することに起因すると考えられており、粒界は転位運動に対する障壁として振舞っていると考えられてきました。しかし、粒界における転位の伝播阻害過程を詳細に解析した結果、上記に加えて粒界はその特異な原子構造により転位を粒界面上で安定化させ、転位をトラップすることが明らかとなりました。そして、このようなトラッピングの効果により転位の伝播が妨げられることが分かりました。また、構造が異なる粒界に対して伝播阻害過程を観察したところ、異なる粒界では転位の伝播阻害の度合いも大きく異なることが明らかとなりました。この結果は、粒界毎に材料強度に与える影響が異なることを示唆しています。本研究成果は粒界の材料強度特性への影響に関して基礎的知見を与え、今後、粒界制御により同一材料でも高強度な構造材料を創製するための設計指針に繋がる重要な成果です。

本研究は、文部科学省元素戦略プロジェクト構造材料元素戦略研究拠点(ESISM)の助成のもと東京大学と京都大学の共同で行った研究成果であり日本時間11月12日(土)午前4時 (米国東部時間:11日(金)午後2時)に米国科学誌「Science Advances」(電子版)で公開されます。

 

粒界と転位の動的相互作用のその場観察結果(ビデオのキャプチャー像)
(a) 両側の結晶粒の方位差が1.2°の小傾角粒界の場合及び (b)方位差が36.9°の大傾角粒界の場合。小傾角粒界では転位はほとんど阻害されずに伝播するので、強度の向上に寄与しない。一方、大傾角粒界の場合、転位伝播は粒界によって大きく阻害され、転位が粒界に堆積していることが分かる。この転位堆積が材料強度の向上に大きく寄与している。

 

プレスリリース本文:/shared/press/data/setnws_20161114111808380542997209_357290.pdf

Science Advances:http://advances.sciencemag.org/content/2/11/e1501926.full

日経工業新聞: こちら

<記事>
fabcross for エンジニア http://engineer.fabcross.jp/archeive/161115_u-tokyo.html