プレスリリース

東京大学と住友化学、次世代環境配慮デバイスの開発で社会連携講座を開設 ~新しい物理現象を用いた研究開発を産学連携で推進~

 

国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長:染谷隆夫、以下、東京大学)と住友化学株式会社(代表取締役社長:岩田圭一、以下、住友化学)は、対称性の低下した物質における新しい物理現象の開拓および同現象を利用した環境配慮デバイスの開発を研究テーマとする社会連携講座※「新しい物理現象を用いた次世代環境配慮デバイスの開発」を4月1日に開設します。

本講座は、東京大学の卓越した学術的知見・技術と、住友化学の無機材料機能設計やデバイス設計などにおける広範なコア技術というお互いの強みを組み合わせて行う共同研究です。技術分野における相互の知的・人的・物的資源の交流や、共同研究開発活動の推進による新しい価値の創造を図ります。

連携を通じて、対称性の低下した物質における電子同士の強い相互関係に着目した新奇な物理現象の開拓・検証に取り組むことにより、これまでにない原理で駆動する次世代環境配慮デバイス(具体的には、熱電変換・環境発電デバイスや、超低消費電力誘電メモリ)の実証、将来の実用化に向けた研究開発を推進いたします。

※    公益性の高い研究課題について、東京大学と企業等が共同研究を行うものであり、東京大学と企業等との契約に基づいて企業等が負担する共同研究経費によって運営される。包括的な社会課題テーマのもと、従来、自然発生的であった企業と各研究者との共同研究で限界のあった異分野の研究者との連携や、複数の研究者とチーム結成が可能になる


1.社会連携講座の概要
【目的】
・結晶性物質の空間反転対称性や時間反転対称性を低下させることで、これまでにない新しい物理現象が発現することが近年の研究により見出されています。特に、電子同士で強い相互作用を生じている「強相関電子材料」と呼ばれるような物質群では、これらの対称性と強く結びついた現象がより顕著に発現することが明らかとなっています。
・このような新奇な物理現象においては、電気的・磁気的な応答が通常の金属や半導体などといった物質とは質的に異なる挙動を示すことから、現在のエレクトロニクス分野の主流であるシリコンテクノロジーの理論的限界を超越しうる技術として、産業応用の面からも興味深い学術領域といえます。本講座では、結晶対称性の低下がもたらす新奇な応答現象を開拓し、これまでにない原理で動作する環境配慮型のデバイスの開発ならびに実用化を目指します。

【設置期間】2023年4月1日 から 2026年3月31日(3年間)

【代表教員】齊藤 英治(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 教授)
      齊藤教授が、本社会連携講座の特任教授を兼務します。

【研究内容】
・対称性の低下した物質において生じる非線形・非相反現象の研究を通じ、現象の理解を深めて材料系の設計・創出を行うとともに、同現象を利用した熱電変換・環境発電の実証および実用化を目指します。
・強的性質の相関効果により発現される新奇な応答現象の研究を行い、超低消費電力で駆動可能な電流型誘電メモリの実証およびデバイス実用化を目指します。

【期待される成果】
・新しい原理に基づく熱電変換デバイスおよび超低消費電力で駆動可能な電流型誘電メモリの開発・実用化を通じ、創エネルギー・省エネルギーの双方の側面から、持続可能な社会の形成に貢献します。
・新しい物理現象にまつわる研究開発を通じ、本分野での学術領域と応用開発の双方をカバーできる人材を育成・輩出します。

 

 

 

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