国立大学法人東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 船瀬・五十里研究室(開発当時:中須賀・船瀬・五十里研究室、以下「東京大学」)は、株式会社アークエッジ・スペース(以下「アークエッジ・スペース」)およびTaiwan Space Agency (TASA) と共同で開発した10kg級超小型地球観測衛星「ONGLAISAT(オンライサット)」が、AIAA(米国航空宇宙学会)Small Satellite Technical Committeeの主催する「Small Satellite Mission of the Year Award 2026」を受賞したことをお知らせいたします。
日本の大学および企業が開発に参画したミッションが同賞を受賞するのは今回が初めてとなります。
本ミッションは、産学官および国際的な連携のもと、東京大学が長年培ってきた高度な衛星システム設計および高精度姿勢決定・制御技術の知見を注ぎ込み、共同開発チームとして10kgのCubeSatという極めて限られたサイズ内でのシステム統合を実現しました。軌道上運用を通じて、CubeSatクラスとして世界最高峰となる地上分解能2.44mかつS/N比100を超える高精細地球観測撮像に成功し、産学・国際連携による超小型衛星開発の優れた実証成果が世界的に高く評価されました。
■ 共同開発における取り組みと評価された技術的ポイント
本プロジェクトにおいて、東京大学はアークエッジ・スペースおよびTASAとの緊密な連携のもと、衛星システムの設計や基幹となる姿勢決定・制御系をはじめとする衛星バスの技術開発を担いました。主な技術的達成内容および評価ポイントは以下の通りです。
高精度姿勢決定・制御システム(ADCS)の軌道上実証:
地上分解能2.44mおよびTDI(Time Delay Integration)撮像を実現するためには、撮像中に1秒角(露光時間数ミリ秒間)という極めて高い姿勢安定度が求められます。東京大学が中心となって開発・検証を行った姿勢決定・制御アルゴリズムが、軌道上での安定した高精度指向の確保に大きく貢献しました。
産学・国際連携による高度なシステム統合:
TASAが開発した高性能光学観測装置(ペイロード)と、高精度姿勢制御・オンボード画像処理機能を備えた衛星バスを6Uサイズに高密度かつ統合的に実装し、確実な観測運用を達成しました。
実用性と堅牢性を備えた衛星運用の実証:
初期運用完了後の約2か月間で100回を超える高頻度な撮像運用を安定して完遂し、大学発の高度な衛星技術と産業界の運用ノウハウが融合した信頼性の高いシステムであることを提示しました。
■ 研究室からのコメント(東京大学大学院工学系研究科 准教授 船瀬 龍 / 准教授 五十里 哲)
「今回のSmall Satellite Mission of the Year Award受賞は、当研究室が取り組んできた超小型衛星システムおよび高精度姿勢制御技術と、パートナーの皆様の高度な技術・運用力が結実した成果であり、共同開発チームの一員として大変喜ばしく光栄に思います。
10kgのCubeSatという非常に小さく制限されたプラットフォーム上で高分解能撮像を実現することは極めて大きな挑戦でしたが、TASAおよびアークエッジ・スペースとの力強いパートナーシップ、そして本衛星の開発・運用に関わった当研究室の多くのスタッフ・学生の努力があったからこそ実現できたミッションです。本成果を足がかりに、今後も産学官および国際連携を通じて、超小型衛星による新たな宇宙利用・探査の可能性を切り拓いてまいります。」
■ 「Small Satellite Mission of the Year Award」について
「Small Satellite Mission of the Year Award」は、AIAA(American Institute of Aeronautics and Astronautics)のSmall Satellite Technical Committeeが主催し、過去1年間で小型衛星の技術・能力向上に最も顕著な貢献をしたミッションを表彰する国際的に最も権威ある賞の一つです。
候補となる世界各国のミッションの中から複数のファイナリストが選定され、一般投票を含む選考プロセスを経て、米国で開催される小型衛星に関する世界最大の国際会議「Small Satellite Conference」にて最優秀賞が発表・表彰されます。ONGLAISATは2025年に達成した軌道上実証成果が高く評価され、今回の受賞に至りました。
■ 今後の展望
東京大学は、本ミッションで実証された高精度姿勢制御技術や衛星システム統合の知見をさらに発展させ、高度な地球観測のみならず、月・深宇宙探査や編隊飛行など、多様化する将来の宇宙ミッションへの応用を進めてまいります。また、産業界や国内外の研究機関との強固な連携を通じて、高度な宇宙人材の育成と日本の宇宙開発技術の国際競争力強化にも引き続き貢献してまいります。
■ 研究に関するお問い合わせ先
船瀬・五十里研究室ウェブサイトの問い合わせフォームよりお問い合わせください。
https://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/