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台風の強化予測に革新:静止衛星観測で“前触れ”を捉え、予測精度向上を実証

作成者: Public Relations Office|Jul 25, 2025 5:27:23 AM

東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻の南出将志特任准教授らの研究グループは、NASAジェット推進研究所との共同研究により、静止気象衛星GOES-16の全空輝度データを用いた高解像度データ同化によって、熱帯低気圧の急激な強化(初期強化)を高精度に予測することに成功しました。この研究成果は、英国気象学会誌『Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society』に掲載されました。


本研究では、これまで困難とされてきた雲域を含む「全空(all-sky)」の赤外衛星観測を、独自に開発したデータ同化アルゴリズムにより安定的に活用可能であることを、初めて体系的に実証しました。2017年の北大西洋ハリケーンシーズンに発生した複数のハリケーンを対象に数値実験を行い、公式予報と比較して最大約20%の予測誤差を削減できること、特に、初期段階の予測における負のバイアス(台風の発生・発達を予測できず、弱く見積もる傾向)の軽減に大きく貢献することが示されました。
使用されたGOES-16は、日本の「ひまわり」衛星と同様に静止軌道に位置し、広域を高頻度で観測可能な最新鋭の気象衛星です。本研究は、こうした静止衛星の観測データを数値天気予報に直接活用する技術的枠組みを確立したものであり、台風予報の高度化に向けた新たな可能性を拓く成果です。今後、地球規模の防災・減災への貢献が期待されます。

 

Figure adapted from Minamide & Posselt (2025), licensed under CC BY-NC 4.0.

 

 

論文情報
雑誌名:Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society
題 名:Improving tropical cyclone intensification prediction using high-resolution all-sky Geostationary Operational Environmental Satellite data assimilation
著者名:Masashi Minamide¹²*, Derek J. Posselt²*:責任著者)
著者の所属機関:
¹
東京大学大学院工学系研究科 社会基盤学専攻
²Jet Propulsion Laboratory, California Institute of Technology
(米国)

DOI:10.1002/qj.4958

URL:https://rmets.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/qj.4958