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都市工学科 木村 明さん(B4・受賞当時)、成井 竣亮さん(学部研究生・受賞当時)、都市工学専攻 則竹 桃実さん(M2・受賞当時)が日本災害情報学会第30回学会大会 優秀発表賞を受賞されました

作成者: Public Relations Office|May 16, 2025 5:49:33 AM

2025年3月16日、都市工学科 都市情報安全システム研究室 木村 明さん(B4・受賞当時)、成井 竣亮さん(学部研究生・受賞当時)、都市工学専攻 都市情報安全システム研究室 則竹 桃実さん(M2・受賞当時)が日本災害情報学会第30回学会大会 優秀発表賞を受賞されました。


左から、則竹 桃実さん、成井 竣亮さん、木村 明さん

日本災害情報学会第30回学会大会 優秀発表賞(口頭発表部門)
日本災害情報学会大会で優秀な口頭発表を行った40歳以下の若手研究者・学生に授与される賞です。

受賞された研究内容・活動について
【木村 明:都市工学科 廣井研究室
タイトル:物的環境の整備につながる防災まちづくり活動の主体とプロセスに関する研究-SCATを用いた防災まちづくり大賞受賞事例の質的データ分析-

研究内容:防災まちづくりは本来、災害に強い地域をつくるために、ハード(施設整備など)とソフト(意識啓発や体制づくりなど)の両面から取り組む総合的な活動です。しかし、住民参加型の取り組みでは、住民の防災意識向上やコミュニティ形成といったソフト面に偏る傾向があります。本研究では、住民参加によってハード整備(物的環境の改善)を実現している複数の事例を対象にインタビュー調査を行い、防災分野ではあまり使われていない「SCAT」という質的分析手法を用いて、それらの背景や特徴を分析しました。その結果、次のような共通点などが明らかになりました:
・課題解決に向けた取り組みが組織的に行われている
・小さな成功体験が積み重なり、住民の負担感を軽減し、達成感や地域への愛着を育んでいる
・地域の特性に合わせた柔軟で独自性のある活動が行われている
これらの知見は、今後の防災まちづくりの実践への活用が期待されるだけでなく、防災分野における新たな分析視点の提供にもつながるものだと考えております。

【則竹 桃実:都市工学専攻 廣井研究室
タイトル:大規模水害時の避難のあり方の検討-江東5区民間施設へのアンケートを踏まえた推計-

研究内容:気候変動の深刻化に伴って大規模な水害の発生が予測されており、特に海抜ゼロメートル地帯と呼ばれるエリアでは深刻な被害が危惧されています。当該エリアでは浸水してから水が引くまでの期間が場所によっては2週間以上の長期に及ぶ危険性が指摘されており、仮に当該エリアにとどまる避難(域内避難)を行った場合、滞在場所から外に移動ができず、水が引くまでの長期間を籠城して過ごす必要があります。その場合、食料・水等の物資の不足や深刻な健康被害等に伴う二次的な人的被害リスクがあるため、政府は行政界を超えて浸水しない区域へ避難すること(広域避難)を推奨しています。一方で、浸水区域が広範囲に及ぶ場合、その分、広域避難対象者が多くなり、避難時の交通の確保等、広域避難の実現に関する様々な課題の発生も想定されます。以上のような状況を踏まえ、広域避難一択ではなく、域内避難とのバランスを踏まえた避難の最適化の検討が求められています。
このような背景を踏まえて、本研究では、海抜ゼロメートル地帯の一つである江東5区(足立区、江戸川区、江東区、葛飾区、墨田区)を対象に、浸水区域を含む町丁目内避難の可能性を推計し、広域避難を優先するべき町丁目等を考察しました。大規模水害時の最適な避難の具体化が求められている中で、当研究成果は、具体化の検討時の「素材」として活用できるものだと考えています。

【成井 竣亮:都市工学科 廣井研究室
タイトル:市街地火災における消防活動量の分析-2016年糸魚川市大規模火災・2024年輪島市大規模火災の事例から-

研究内容:現在、災害対応終了後の活動分析や組織内で活動内容を振り返る際にも消防組織ごとに行われており、全国的な消防活動分析手法は実現されていません。そこで本研究では、過去に発生した災害を対象に消防職員の火災対応に焦点を当て、消防活動タイムラインを作成し、活動内容や活動時間をもとに消防活動の分析を行いました。また、変化する火面長と消防活動量を比較し、分析することで災害時における消防活動を可視化しました。
本研究の成果は、今後発生しうる災害において被害量に対する消防活動量の推量・可視化が可能になるものと考えられます。

今後の抱負・感想
【木村 明】
この度は、栄えある賞をいただき、大変光栄に思っております。私にとっては今回が初めての学会発表であり、企業の方々や大学教員、研究機関の専門家など、実社会の第一線で活躍されている方々の前で発表することに大きな緊張を感じました。しかし同時に、社会への影響や責任を実感し、身の引き締まる思いでもありました。このような貴重な機会を得られたのは、日頃から熱心にご指導くださった先生方のご支援があってこそです。この経験を励みに、今後の研究にも一層力を入れて取り組んでいきたいと思います。

【則竹 桃実】
この度は、大変栄誉ある賞をいただき、嬉しく思います。改めて、ご指導いただいた皆様や各調査にご協力いただいた皆様、研究活動をご支援いただいた皆様に御礼申し上げます。
本研究は一側面を取り上げたに過ぎないと考えておりますので、これからも「研究」を続け、水害対策や都市防災に貢献できるように精進して参りたいと思います。また、シンクタンク企業に所属して防災関連の調査事業等に関わる機会をいただけている状況を生かして、研究成果を活用した「社会実装」にも関わっていければと考えています。

【成井 竣亮】
この度は、優秀発表賞をいただき、誠に名誉に思います。
当初はうまく進められず、先生方にはご迷惑ばかりお掛けしていましたが、丁寧に指導していただいたおかげで、このようなすばらしい賞を受賞できました。今後も研究を突き詰めていきたいと思います。

 

日本災害情報学会 第30回学会大会「優秀発表賞」決定!:http://www.jasdis.gr.jp/