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学生インタビュー|辻 知香葉さん

作成者: Public Relations Office|Mar 19, 2025 4:28:45 AM

 

 

工学部広報室の学生TA Ttime! が "MIT(マサチューセッツ工科大学)への交換留学プログラム" から帰ってきた学生にインタビュー。機械情報工学科の3年生、辻 知香葉さんを取材させていただきました。

AIロボット研究への情熱とMIT留学で感じたことについてたっぷり話を伺いました。最後には高校生へのメッセージもいただいたので是非ご覧ください!

※工学部機械系(機械工学科、機械情報工学科)・マテリアル工学科・システム創成学科の制度

 

 

――本日は、よろしくおねがいします。まずは、機械情報工学科を選んだ理由を教えてください。
私が機械情報工学科を選んだ理由は、AIとロボットの融合領域に興味があったからです。そもそも私がロボットに興味を持ったきっかけは、5歳のときに開発段階のASIMOが見事にバランスを取ってるのを見て感動したことです。小学校5年生の夏休みからはロボットの教室に通って、レゴ® マインドストーム® EV3という教育用ロボットを用いたロボットプログラミングを学び始めました。授業の内容をもとに、自分でプログラミングをしてロボットを作り、最後にはロボコンで競い合うというカリキュラムで、すぐにロボコンに夢中になりました。

 

小中高といろいろなロボコンに挑戦してきました。大会ごとに会場が変わると、競技フィールドの環境が変わるので、これまで動いていたプログラムでも急に動かなくなります。すると、人の手で調整する必要がでてきます。そういった環境の変化に対して、人の手ではなく自律的に対応できるようなロボットがあればいいなと思い、AIロボットに興味を持つようになりました。高校2年生のときには、学校の課題研究の機会を利用して、NVIDIAから出たばかりだったJetBotという教育用AIロボットを用いて、自主研究を行いました。

 

こうした経験を通じて、環境の変化に対して自律的に対応できるAIロボットに興味を持ち、機械情報工学科を選びました。――小さい頃からロボットにふれる機会が多かったのですね。また、環境の変化に自律的に適応させたいというロボコンでの気づきが、今のロボットラーニングの研究のモチベーションになっているのですね。

 

機械情報工学科へ進学するきっかけとなったEV3(左)とJetBot(右)

 

――昨年の夏に日本ロボット学会から表彰されたと伺いました。研究の内容について詳しくお聞かせください。
ロボット学会から表彰された研究の内容について、まずは背景から説明させてください。

私は東京大学に学校推薦型選抜で入学したのですが、推薦入学の学生は1年生の頃から学部後期課程(工学部)の専門授業が履修できる「早期履修」の仕組みがあります。工学部の創造的ものづくりプロジェクトという授業に、ロボコンの世界大会に挑戦しようという、工学部の松尾 豊教授と岩澤 有祐准教授が担当される授業があったので、1年生のSセメスター・Aセメスター、2年生のSセメスターと3期連続で受講しました。


その授業では、トヨタのHSRというサービスロボットを用いて、部屋の片付けだったり、レストランのサービスタスクといった様々なホームサービスを行うロボットシステムを開発し、タスクの成績で競い合う、RoboCup@Homeというロボコンに挑戦をしました。ちょうどLLM(大規模言語モデル)やChatGPTが話題になり始めた時期でしたので、それらをロボットの制御に使えないかと考え、ロボットシステムに組み込みました。そのシステムを用いて、2年生の5月のロボコン全国大会では歴代最高得点で優勝し、その後の7月のフランス・ボルドーで行われた世界大会では第3位に入賞することができました。

このときに開発したロボットシステムについて、2年生の9月に行われた日本ロボット学会で発表したところ、優秀講演賞をいただくことができました。

――東大工学部でのロボコンの活動が表彰に繋がったのですね。

 

ロボット学会で表彰された研究内容

 

――MITの留学に参加しようと思ったきっかけについて教えてください。
工学部の機械系に、MITとの交換留学プログラムがあることは、機械情報工学科に進学して、2年生の秋に行われた機械系進学ガイダンスで初めて知りました。元々中学高校と何度かロボコンの世界大会に参加していました。世界中の同年代のライバルたちと切磋琢磨する機会があり、漠然といつか留学してみたいという思いがありました。

それに加え、GPUや生成AIが生まれた国であり、世界中から優秀な人材が集まってくるアメリカの研究環境に興味があったため、挑戦することにしました。また、工学部で提供されているTOEFLの勉強コースに参加して、2年生の10月からTOEFLの勉強を開始して、何とか必要なスコアを揃えて交換留学の機会を得ることができました。
――ロボコンの世界大会がきっかけで留学に興味を持つようになったのですね。

 

――MITでの1週間の生活はどのようなものでしたか?
MITの授業は、例えば429のように表示されています。これは、1週間のその授業における最低限の勉強の目安の内訳となっています。一番最初の数字が1週間あたりの講義の時間、真ん中の数字が1週間あたりの演習の時間、そして最後の3番目の数字が1週間当たりの宿題を含む予習・復習の時間となっています。この授業だと、4+2+9で合計15時間、1週間あたりに15時間の最低限の勉強時間が求められていることになります。このように宿題や演習がたくさん課されているのですが、先生やTAに質問できるオフィスアワーが予め設けられています。そのため、講義やオフィスアワーの時間以外を1週間でうまく計画的に回していく必要があります。私の場合だと、月曜日と水曜日に講義やオフィスアワーが集中していたので、火曜日、木曜日、金曜日をグループワークや宿題、研究インターンにあてて、うまく回していました。

 

また、MITの面白いところは、Student Center(スチューデント・センター)と呼ばれる、みんなでご飯を食べたり宿題、グループワークができるような施設があるところだと思います。そこが午前の2時まで空いていたり、図書館が24時間空いていたりと、夜遅くまでキャンパスで勉強できるような環境が整っていました。大きな課題が出たときなどはグループワークで行っていたので、暮らしている寮の異なるメンバー同士でオンラインで繋げながら、明け方までグループワークを頑張った日もありました。またグループワークがとても多いのが特徴で、チームビルディングのためにみんなで食事に行ったり、スイーツを食べに行ったり、冬にはアイススケートに行ったりもしました。

MITでの記念写真

 

――グループワークや演習が非常に多いのですね。スイーツやアイススケートなど学生生活も楽しそうですね。

お話の中で、「研究インターンシップ」というキーワードがでてきましたが、MITでの研究インターンシップがどのようなものだったか教えてください。

 

MITには、Undergraduate Research Opportunities Program(通称UROP)と呼ばれる学部生向けの研究インターンシッププログラムがあります。各研究室がUROP向けに公募しているものもあれば、先生と直接交渉して研究インターンシップをさせてもらうこともあります。面白いのが、事前に1週間あたりに何時間貢献できるかを合意して、その対価として、給料、もしくは単位をもらうことができます。私は単位をもらうことにしました。


私が研究インターンシップをするきっかけとなったのは、大学2年生と3年生の間の春休みに、東大の機械系の研究インターンシップに参加をして、その成果を大学3年生の5月の国際学会で発表する機会があったのですが、その際に知り合いになったMITの博士学生に連絡をとってMIT Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory (CSAIL)で研究インターンシップをさせてもらうことができました。

研究インターンシップでは、イギリスからの客員研究員、MITの博士学生、MITの学部4年生、それから私の4人で最新のヒューマノイドを使ったAIロボットの研究に携わることができました。


また、研究以外にも、毎週、研究室での勉強会に参加させてもらったり、外部専門家を招いたワークショップに参加させてもらったりと、MITの研究環境をよく知ることができました。またCSAILでは、毎週木曜日に無償でピザが配布されているのですが、他の研究室のメンバーと意見交換できる場も設けられていて、学部生や大学院生として正規留学している友人もできて、とても良い刺激を受け受けました。

 


――MITでの研究環境をとても良く知ることができた、充実して楽しい留学生活でしたね。研究の他にも、授業で印象に残ったものはありますか?
MITで印象に残った授業は、AI(人工知能)の授業です。MITの学部には、研究室配属や必修の卒業論文といった仕組みがありません。そのため、大学院に行きたい学部生は、自主的にUROPといった研究インターンの機会を得て、論文を書き、大学院の準備を行います。研究室での研究が必須ではない代わりに、授業で、論文の書き方や、学会のポスター発表、プレゼンテーションといった研究の疑似体験ができる仕組みになっています。授業の前半では、座学や演習があり、後半ではグループワークでのプロジェクトを行うといった形式が多く、AIの授業では、最終日に学会形式でフォーマルな服装でポスター発表を行いました。

 

AIの授業の最終回:ポスターセッションの様子

 

授業での発表の内容が良いと、そのまま学会への論文投稿を勧められる仕組みになっていました。また、私が受講したAIの授業では、途中でハッカソンがあり受講者全員でスコアを競い合うというものでした。ランキングとスコアがリアルタイムで受講者全員に共有される仕組みになっており、私たちのチームは締め切り5分前まで1位にいたので、優勝できると確信して油断してしまったのですが、締め切り5分を切ってスコアを更新するチームが現れ、惜しくも2位に終わってしまいました。

このようにAIの授業では、単にAIの技術や知識だけでなく、いろいろな学びを得ることができました。

――ハッカソンでも入賞されたのですね。おめでとうございます。

 

AIの授業のハッカソンで入賞した際の表彰状

 

 

――最後に、後輩に向けてメッセージをお願いします!
好きなこと、没頭できることを見つけるのが一番大切だと思います。好きなことを見つけたら、日本以外の世界にも視野を広げて留学に挑戦してみるのもいいと思います。また、好きなことや没頭できることを見つけること自体、大変なことだと思いますが、フットワーク軽く、いろんなことに挑戦してみると、きっと見つかると思います。

――本日はありがとうございました。

 

 

※このインタビューは工学部広報室TA Ttime!のメンバーによって企画編集されました。

取材・執筆・撮影 / 編集:
椿 道智(機械情報3年)、豊島 慶大(電気電子4年)、瀧田 紘暉(電気電子4年)


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