【経歴】
【研究について】
ナノ光技術(プラズモン・フォノン・ルミネッセンスなど)を応用して、生体分子情報センシングや生体防御技術、及び熱制御に向けた多角的な研究開発を行っています。例えば、①プラズモニックマテリアルによる生体分子や生体ガス反応の分光計測の構築、②応力・歪みに伴う光反射や発光現象を利用した応力光技術の創出及びその可視化・診断技術への応用、③無機やバイオマテリアルを用いた熱・電磁波からの生体防御技術の創出、つまり生体分子計測やバイオメカニクス、及び生体防御技術まで幅広い研究分野をターゲットにしています。狭い学問分野にとらわれず、明確な出口志向を意識した研究を展開しています。
(A) バイオメカニクスに向けた応力光センシング
試料に発生する応力・歪みの高感度検出に向けて、従来は電気的な計測手法が利用され、歪み量に応じて異なる原理で動作するセンサー(金属や圧電デバイス)が存在します。しかし、電気的計測は、応力を直接的に計測することが困難です。一方、光学的手法は応力集中を直接的に観測することが可能であり、光弾性法やモアレ法等が報告されています。これなどの手法は、弾性変形領域で主に用いられ、塑性変形領域や複雑な構造体への適用、及びリアルタイム計測に大きな課題があります。近年、生体運動機能の検出に向けたヒューマニクス分野や生体情報検出の重要性から、高い歪み領域(50%以上)での応力計測、及びその可視化技術が社会的に要求されています。試料に発生する力学的特性を、高い空間分解能を持ってリアルタイムに計測可能な応力センシングが必要です。本研究では、無機バイオマテリアルや生体親和性の高い材料に着目し、生体や構造物等の応力集中を直接的な可視化及びそのダイナミクスな計測可能な新しい分光計測の開拓を推進しています。
(B) ナノ光技術とバイオ・メディカル分野への応用展開
本研究は、可視から赤外域のナノ光技術を応用して、生体分子間相互作用の高感度センシングを可能とする分光計測の創出を目指します。特に、階層的なナノ構造制御(0次元から3次元構造)は、微小な局所空間での電磁場制御の自由度を与え、表面プラズモンや表面フォノン波励起に向けたナノプラットフォームとなります。それは、生体・無機界面(バイオインターフェイス)の制御に基づいて、抗原抗体反応や生体呼気ガス等の分光検出に着目したヘルスケア応用に貢献します。特に、表面増強ラマン分光(SERS)や表面増強赤外分光(SEIRA)は、生体分子に特徴的な物理化学的な情報(振動・回転キラリティー)を含み、人工知能(AI)やデータサイエンス等の計算機科学との融合も期待されています。
(C) 電磁波や熱からの生体防御技術
近赤外光(太陽熱)は、生体(特に、皮膚表面)に大きな影響を及ぼします。人の健康と暮らしを守る新しい光技術の実現に向けて、熱線を含む近赤外光を効率的に遮熱することが期待されています。本研究では、酸化物半導体ナノマテリアルの光技術に着目し、近赤外光を高効率に反射可能な遮熱フィルムの創出を目指しています。それは局所ナノ空間内の近接場効果を積極的に利用し、メートルスケールサイズの光学応答を制御する光技術です。近年、スキンヘルスケア応用に向けて、皮膚表面への近赤外光の侵入をカットする光技術も要求され、無機バイオマテリアルの光制御も必要とされています。無機・バイオマテリアルを用いて、人の健康と暮らしを支える新しいナノマテリアルの研究開発を推進しています。
【今後の抱負】
狭い学問分野にとらわれず、ユニークな基礎科学のコンセプトに基づいて、明確な出口志向を持った研究を目指します。特に、昨今の社会情勢の変革に伴い、課題解決型(社会実装への展開)に資する研究が要求されています。産学官連携による協働を軸に、目的意識を持った研究を目指します。
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