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若手研究者紹介:杉山弘和准教授

 

 

 

 

【経歴】
2001年 東京大学工学部化学システム工学科卒業
2003年 同大学院工学系研究科化学システム工学専攻修士課程修了
2007年 ETH Zurich, Institute for Chemical and Bioengineering, PhD
2007年 製薬会社F. Hoffmann-La Roche(スイス)入社, バイオ医薬品注射剤新工場の立ち上げと実生産に従事
2013年 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻准教授

 

【研究について】
薬の先端モノづくりの方法論
 医薬品は、命に直接かかわる工業製品です。従来は、化学合成でつくられる低分子医薬品が主でしたが、近年ではモノクローナル抗体をはじめとするバイオ医薬品のシェアが急速に拡大しています。遺伝子治療の実用化やiPS細胞の臨床応用など、様々な新展開も生まれています。「薬の先端モノづくり」を支える、新しい方法論が求められています。
 私たちは、新分野「製薬プロセスシステム工学」を開拓しています。低分子医薬品やバイオ医薬品、再生医療製品を対象に、モデル化・シミュレーション・最適化技術を駆使して製造プロセスを設計・運転するための手法を開発しています。連続生産やシングルユースのような新技術を用いたプロセス設計[1, 2]、少量多品目化で重要になる切り替え操作の最適化[3, 4]、データ駆動型プロセス運転支援[5, 6]に取り組んでいます。iPS細胞製造のプロセス設計[7, 8]にも研究を展開しました。実験室や実プラントを持つ国内外の大学・企業と連携し、実験と計算の両面から研究を進めています。ソフトウェア実装[9]を通した産業応用にも取り組んでいます。分子・細胞からプロセス、医療社会までをマルチスケールに考え、単独スケールでは成し得ない方法論を構築します。

参考文献
[1] K. Matsunami, et al., Ind. Eng. Chem. Res., 57, 9798–9809 (2018)
[2] H. Shirahata, et al., Comput. Chem. Eng., 122, 114–128 (2019)
[3] K. Yabuta, et al., Int. J. Pharm., 548, 466–473 (2018)
[4] A. Zeberli, et al., J. Pharm. Innov., in press
[5] G. Casola, et al., AIChE Journal, 64, 1272–1284 (2018)
[6] G. Casola, et al., Comput. Chem. Eng., 124, 253–269 (2019)
[7] H. Sugiyama, et al., Regen. Ther., in press
[8] Y. Hayashi, et al., Comput. Chem. Eng., 132, 106597 (2020)
[9] H. Shirahata, et al., Processes, 7, 448 (2019)

 

【今後の抱負】
 博士学生の育成、言葉やバックグラウンドの壁を超えた研究室づくりに強い意欲をもって取り組んでいます。これまでに7名の博士学生を受け入れ、昨年最初の修了者を送り出しました。また、ドイツ・スイスから7名の留学生を受け入れ、そのうち3名(いずれもETH Zurich出身)は後に当研究室の博士学生になりました。研究室からも、武者修行プログラムや海外インターンシップの機会を利用して、海外に学生を派遣しています。東大から世界に向けて、薬のモノづくり、そして持続可能な医療社会のあり方を発信したいと思っています。

 

・研究室ウェブサイト
http://www.pse.t.u-tokyo.ac.jp/

・東京大学プレスリリース( 2019年7月18日)
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_201907181552487239034103.html