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若手研究者紹介:岡本敏宏准教授

 

 

 

 

【経歴】
2003年 大阪市立大学大学院理学研究科物質分子系専攻後期博士課程 修了 博士(理学)
2003年 日本学術振興会 特別研究員(SPD)
2003年 名古屋大学大学院理学研究科 博士研究員
2005年 スタンフォード大学化学工学科 博士研究員
2007年 理化学研究所フロンティア研究システム 研究員
2008年 理化学研究所基幹研究所 基幹研究員
2009年 東京大学大学院理学系研究科 特任助教
2010年 大阪大学産業科学研究所 特任准教授/准教授
2013年 東京大学大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻 准教授
2013年 東京大学大学院工学系研究科 応用化学専攻 准教授(兼務)
2013年JSTさきがけ「分子技術と新機能創出」研究者(兼任)
2017年JSTさきがけ「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」研究者(兼任)

 

【研究について】
半導体特性を示す分子性材料である有機半導体材料は、低温・溶液プロセスが可能であり、薄型・軽量・フレキシブルなどの利点を有するプリンテッド・フレキシブルエレクトロニクスデバイスにおける鍵材料として期待されています。近年、半導体特性の指標の一つであるキャリア移動度(以下、移動度と略す)が10 cm2/Vs を超える印刷可能なp型有機半導体材料 (ref. 1, 2, 3, 4)が報告されるようになり、有機半導体材料を用いたRF-IDタグやセンサーなど実デバイスの開発研究が急速に進んでいます。また、物性研究から、低分子系半導体材料(以下、低分子半導体と略す)・高分子系半導体材料(以下、高分子半導体と略す)の別に関わらず、優れた電気伝導性を示す有機半導体中では、高い性能を示す無機半導体と同様に、自由電子的に振る舞う電荷によるバンド的伝導であることも明らかとなっています(ref. 5-7)。一方、モノのインターネット(Internet of Things: IoT)に関わる端末を駆動するうえで、身の回りに存在する未使用エネルギーを利用しやすい電力として取り出す「エネルギーハーベスティング」技術が非常に注目されています。有機半導体材料においても、熱エネルギーを電力に変換する熱電変換機能性の研究がなされています。
 このような背景のもと、我々は「使いたくなる」、すなわち実用的な有機半導体材料を指向し、1) 高移動度、2) 化学的かつ熱的な高安定性、3) 印刷プロセス性、4) デバイスにおける熱、環境、およびバイアスストレスに対する耐久性などを有する独自性の高いp型およびn型有機半導体材料の開発を行っています。これまで培った有機半導体材料の構造有機化学に基づく「分子設計技術」、有機合成化学に基づく「合成化学技術」、徹底してX線構造解析を行うことにより得られた「集合体構造制御技術」に加えて、各々の材料に適した「印刷プロセス技術」、「デバイス構造設計」など、有機化学から、プロセス工学、デバイス工学などの相補的な研究を展開し、材料のさらなる性能向上や新規プロセス、さらには実デバイスの開発を行っている。我々の独自性の高い一連の有機半導体分子群やデバイス作製はプリンテッド・フレキシブルエレクトロニクスなどの次世代エレクトロニクスのキーマテリアル・キーテクノロジーになることは言うにたやすく、さらなる研究展開を行っていきます。

 

参考文献
1) T. Okamoto and J. Takeya et al., Adv. Mater. 25, 6392-6397 (2013). (Inside Front Cover)
2) T. Okamoto and J. Takeya et al., Adv. Mater. 26, 4546-4551 (2014).
3) H. Ishii and T. Okamoto et al., Adv. Sci. 5, 1700317 (2018).
4) K. Takimiya et al., Adv. Mater. 23, 1222–1225 (2011).
5) A. Shishido, H. Matsui and J. Takeya et al., Nat. Commun. 7 (2016) 11156.
6) S. Watanabe and J. Takeya et al., Nat. Phys. 13 (2017) 994.
7) T. Okamoto and J. Takeya et al., Sci. Adv. 4 (2018) eaao5758.
8) J. Takeya et al., Jpn. J. Appl. Phys. 44, L1393–1396 (2005).
9) J. Takeya et al., Phys. Rev. B 81, 161306–1/4 (2010).
10) V. Podzorov et al., Phys. Rev. Lett. 95, 226601 (2005).
11) J. Takeya et al., Phys. Rev. Lett. 98, 196804 (2007).
12) H. Matsui, K. Müllen and J. Takeya et al., Chem. Mater. 28, 420–424 (2016).

 

 

竹谷・岡本研究室:http://www.organicel.k.u-tokyo.ac.jp/