プレスリリース

電圧による局所的な磁化反転に成功~磁性細線中の磁区を利用した情報記録動作の低消費電力化に道~

 

人類が扱う情報量は爆発的に増加しており、クラウドストレージでも磁性体を使ったハードディスクドライブ(HDD)が大活躍しています。HDDでは回転するディスク上のナノ磁石に情報を記録し、スウィングアームに搭載された磁気ヘッドが機械的に動いて情報にアクセスしています。一方、磁性細線中の磁区そのものに情報を記録し、それを電流でシフトすることで情報にアクセスする手法を利用した「レーストラックメモリ」がIBMによって提案されています。機械的動作がないため、HDDより圧倒的に高速な情報へのアクセスを可能とし、安価で高密度な記録も期待できるため注目を集めています。
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の田中勇貴大学院生、同 千葉大地 准教授らは、外部から磁界を加えることなく、磁性細線の一部に絶縁層を介して電圧を加えることで、狙った箇所のみの磁化を反転させること(つまり反転磁区を導入すること)に室温で成功しました。コンデンサに電荷を溜め込むのと同じ仕組みを用いているためジュール損失が極めて少なく、レーストラックメモリにおける「磁区」=「デジタル情報」を書き込むために必要な消費電力の飛躍的な低減に寄与できる技術として期待されます。
本成果は、2018年4月17日(英国夏時間)に、「アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express)」のオンライン版に掲載されます。また、同誌の"Spotlights"論文に選出されました。なお、本研究は科研費基盤研究(S)等の助成を受けて実施されました。

 

 

 

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Applied Physics Express:http://iopscience.iop.org/article/10.7567/APEX.11.053005/meta