プレスリリース

原子層レベルの厚さの超伝導体における量子状態を解明 - 乱れのない2次元超伝導体の本質理解とナノエレクトロニクス開発の礎 - :物理工学専攻 岩佐義宏 教授 等

 

超伝導体はリニアモーターカーや核磁気共鳴(NMR)などに用いられる先端的な材料として、世界中で応用研究が盛んに行われています。特に近年のナノエレクトロニクスの発展に伴い、ナノ材料としての側面を持つ超伝導薄膜や超伝導細線の研究が注目を集めています。このうち超伝導薄膜の研究は、1970年代から続いていますが、その対象物質はビスマス薄膜などの非晶質、または不純物や欠陥を多く含む金属蒸着膜であったため、乱れの少ない理想的な2次元超伝導体が本来持つ性質は未だに明らかになっていませんでした。

今回、東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の岩佐義宏 教授(理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発デバイス研究チーム チームリーダー)、同研究科物理工学専攻の斎藤優大学院生及び東北大学金属研究所の野島勉 准教授らの研究グループは、セラミック半導体の一種でかつ原子膜材料である層状窒化物・塩化窒化ジルコニウム(ZrNCl)高品質単結晶をスコッチテープで剥がす(劈開する)方法を用いて不純物の極めて少ない薄膜を作製し、さらにイオン液体を絶縁層として用いる電気二重層トランジスタ構造を形成することにより、原子層レベルの厚みを持ち、乱れの極めて少ない究極の2次元超伝導が発現することを見出しました。さらに磁場をかけた状態での超伝導の性質を詳細に調べた結果、乱れが極めて少ない超高品質の2次元超伝導体は、磁場下において極低温であっても量子ゆらぎによって磁束が動き続けるため、その超伝導状態(電気抵抗ゼロの状態)を維持できず、金属的な状態になることが明らかになりました。

これらの研究成果は、今後、2 次元超伝導体の本質的な性質を解明していく上での礎となるだけでなく、次世代のナノエレクトロニクス材料の研究・開発をしていく上で重要な知見を与えるものと期待されます。

本研究成果は、米国科学雑誌『Science』のオンライン速報版(ScienceXpress平成27年10月1日版)にて公開されました。

 

 

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