理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター集積バイオデバイス研究チームの田中陽チームリーダー、太田亘俊研究員、北海道大学の与那嶺雄介助教、東京大学大学院の小関泰之准教授、九州大学の星野友准教授らの共同研究グループは、ガラス製マイクロ流体チップに「ダム構造」を持たせることで、泳ぐ微生物の単離と培養をマイクロ流路中で行い、複数の細胞の代謝物を一細胞ごとに経時測定することに成功しました。
本研究成果は、動きが多く継続的な観察の難しい微生物の追跡を可能とし、特定の代謝を行う微生物細胞の選別に応用できるため、バイオ燃料や栄養源の高効率作製や医薬品などの有用物質を産生する微生物のスクリーニングに貢献すると期待できます。
同種の細胞集団の中から、有用物質を多く産生する株を単離するためには、一つ一つの細胞を捕捉し、生かしたままで、その代謝物を分析しますが、特に動きの速い微生物の場合は、測定中に細胞を見失わないようにする必要があります。
今回、共同研究グループは、厚さ0.9 mmのガラス製マイクロ流体チップを作製し、チップ中のマイクロ流路をダムのような構造によってせき止め、細胞培養液を常に流すことで、速く泳ぐ微生物であるユーグレナを一つずつダムの縁に留めて培養することに成功しました。さらに、非侵襲的に代謝物を計測できるラマン分光法と組み合わせて、バイオ燃料成分の原料であるパラミロンがユーグレナ細胞内で産生される様子を経時測定しました。
本研究は、国際科学雑誌『Analytical Chemistry』オンライン版(7月8日付け:日本時間7月9日)に掲載されました。
プレスリリース本文:PDFファイル
Analytical Chemistry:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.analchem.9b01007
理化学研究所:http://www.riken.jp/pr/press/2019/20190709_1/
九州大学:https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/352