ワイヤレス充電用のコイルを家具や衣類などの製品に組み込む場合、まず製品の形状を決めた後に、コイルアレイを設計・実装する手法が主流でした。しかし、このようなコイルアレイを用いた手法では、形に合わせた配線と磁気的な干渉を考慮したコイルの配置・設計が必要なため、高周波回路の知識と多くの時間・労力が必要でした。
そこで、東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授らの研究グループは、ユーザーが望む形状に切って貼り付けるだけでワイヤレス充電を実現できるシートを開発しました。切断されてもコイルアレイの機能をできるだけ失わないような配線形状と、隣り合うコイル間の磁気的な干渉を回避する制御とを組み合わせ、切り取り可能なワイヤレス充電シートを実現しました。
提案するシステムの実証実験として、大きさ400 mm × 400 mmのフレキシブル基板上に重さ82 gのワイヤレス充電シートを作製しました。このシートは、人体への影響が小さいとされる、数百 kHz から数 MHz の磁界を用いてコイル間で電力をやりとりしながら、最大5 W程度まで電力を送ることが可能です。さまざまな形状に切り、貼り付けるだけという手軽さを活かし、置くだけでスマートフォンを充電できる机や棚、ポケットに入れるだけで電子デバイスを充電できる鞄や衣服への応用が期待されます。
なお、本研究の詳細は、論文誌Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies(IMWUT)にて日本時間2018年12月28日(金)(米国東部標準時間:12月27日(木))に、オンライン公開されました。

プレスリリース本文 : PDFファイル
Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies (IMWUT) :
https://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3301777.3287068
川原研究室 : http://www.akg.t.u-tokyo.ac.jp/archives/1891