■ 今月のメッセージ
工学は、社会との関わりの中で発展してきた学問です。今回は、社会と大学がともに新しい価値を生み出す「共創」について考えてみたいと思います。
東京大学工学部の源流の一つである工部大学校は、実践を重視した工学教育を通じて、近代日本を支える技術と人材を育成することを使命としていました。時代は大きく変わりましたが、社会の課題に向き合い、科学や技術によって未来を切り拓くという工学の役割は、現在にも受け継がれています。社会との接続は、工学にとって新しい要請というより、その原点の一つとも言えるでしょう。
一方、大学と社会との関係は大きく変化しています。大学で生まれた成果を社会へ届けるだけでなく、社会との対話から新しい課題を見いだし、ともに研究し、新たな価値を生み出すことが、今日ますます重要になっています。
その意味で、社会との連携は研究成果の「出口」であると同時に、新しい研究の問いが生まれる「入口」でもあると考えています。
■ 現場から
本研究科では、社会連携・産学協創推進室(CERPO)を軸に、企業や社会との共創を進めています。共同研究に加え、現在では80を超える社会連携講座が幅広い分野で展開されるなど、社会との接点は大きく広がっています。
また、その形も多様になっています。研究成果をもとにしたスタートアップの創出、寄附による研究・教育支援に加え、近年ではエンダウメントのように、大学の研究・教育基盤を長期的に支える新しい仕組みも始まっています。
重要なのは、こうした連携の規模を拡大することだけではありません。異なる経験や視点を持つ社会の人々と研究者が対話することで、大学の中だけでは見えなかった課題に気づき、そこから新しい研究が始まることに大きな意味があります。
■ 皆さんへ
研究室の中にある知と、社会の中にある問いが出会うことで、新しい工学が生まれます。
社会との対話を研究や教育のさらなる発展につなげ、工学の力で未来をともにつくっていきたいと思います。