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 建築学専攻 野口貴文教授による「C4S研究開発プロジェクト」のこれまでの研究成果が、10月6日に開催されるICEF(Innovation for Cool Earth Forum、https://www.icef.go.jp/program/)のサイドイベントにて紹介され、今後のカーボンリサイクルの実現に向けた議論がなされます。また、10月8日にはJournal of Advanced Concrete Technologyに論文が掲載(https://doi.org/10.3151/jact.19.1052)されます。

 

研究詳細

コンクリートは、地球上で水に次いで使用量の多い材料・物質で、建築物・土木構造物などの社会資本整備にとって必須の建設材料です。しかし、その主要材料であるポルトランドセメントの生産に際して、有限な天然資源(可採年数は約100年)である石灰石を大量に使用するとともに、温室効果ガスであるCO2を大量に排出(世界全体の7%)しています。このような資源枯渇とCO2排出の問題を根本的に解決するため、「C4S研究開発プロジェクト」では、図1に示すように、建築物・土木構造物として蓄積されているセメントコンクリート中のCaをCO2の固定化が可能な潜在的未利用資源とみなし、建築物・土木構造物の解体によって発生するセメントコンクリート廃材と大気中のCO2とを炭酸カルシウムコンクリート(CCC: Calcium Carbonate Concrete)として再生する技術を開発中です。そして、CCCを現在のセメントコンクリートに替わる主要建設材料として利用することで、新たな資源循環体系(C4S:Calcium Carbonate Circulation System for Construction)を実現することを目指しています。

現在、図2のように、セメントコンクリート系廃棄物とCO2とを水を介して接触させて炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)水溶液とし、コンクリート廃棄物などを破砕して製造した粒子間にその水溶液を通水し、水分蒸発、温度変化、pH変化などの操作を施すことで、粒子間に炭酸カルシウムの結晶を析出させて硬化体を製造する技術開発を進めており、これまでに図3のような硬化体(圧縮強度は最大で8.6MPa、直径は最大で5cm)が得られています。また、図4のように、CCCはカーボンマイナス(CO2は排出されず、吸収される状態)となり、CCCがリサイクルされて再びCCCとなる場合にも、排出されるCO2量は非常に少量であると想定されます。

将来、CCCが実用化されると、これまでにセメント生産時の石灰石の脱炭酸によって大気に放出されたCO2の全量(日本全体で約20億トン、世界全体で約550億トン)が回収され、CCCとして固定化できます。CCCは、省エネルギーで何回でも繰り返し再生利用することができるので、人新世以降にセメントコンクリートが進めてしまった環境影響の時計の針が巻き戻されます。

数億年前の太古にCO2が石灰岩となって堆積し、ヒマラヤ山脈やアルプス山脈が盛り上がって、生物が生きていけるクールアースになりましたが、「C4S研究開発プロジェクト」では、これを現代文明社会で再現して、再び地球を救おうとしています。

 

 

   
図1 C4Sの資源循環 図2 CCCの製造原理
 

 
図3 製造されたCCC(上:圧縮強度8.6MPa、下:直径5cm) 図4 CCCのカーボンニュートラル性