プレスリリース

2017.08.21

非平衡で強相関物質の超伝導が強まるという原理を提唱 −熱平衡では到達できない強い超伝導をレーザー照射により実現する方法を、スーパーコンピュータを駆使して発見−:物理工学専攻 井戸康太さん(D3)、大越孝洋特任助教、今田 正俊教授ら

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の井戸康太大学院生、大越孝洋特任助教および今田正俊教授の研究グループは、強いレーザー光を電子間相互作用の強い物質(強相関物質)へ照射することで、その物質における超伝導性が熱平衡系では達成することができないほど増大することを、スーパーコンピュータを駆使した理論的な考察により見出しました。

物性物理学の夢の一つとして、室温領域における超伝導の実現が挙げられます。これまでの常圧下での最高転移温度Tcは、銅酸化物で実現された約-140℃でした。転移温度を室温領域まで上げようとこれまで数多くの実験がなされてきましたが、常圧下でのTcはここ数十年でほとんど変化していません。この足踏みを打破するために、近年、レーザー照射などの非平衡過程(1)を利用して転移温度を制御しようという試みが精力的に行われています。

本研究では、標準的な強相関電子系における光照射ダイナミクスの理論模型に対する解析を電子間に働く相互作用を高精度に取り扱うことのできる最新の数値計算手法に基づいて行いました。その結果、本研究グループは、平衡状態において超伝導を抑制してしまう電荷不均一状態を回避して、顕著な超伝導をもつ動的に安定な状態を光照射によって実現できることを示しました。この結果は、相関電子物質での光による室温超伝導の将来の実現へ向けて新たな局面を切り開く成果と言えます。

本研究成果は、米国の科学雑誌「Science Advances」のオンライン版(米国東部時間:8月18日付)に掲載されます。

プレスリリース本文:/shared/press/data/setnws_201708211310527016545566_147769.pdf

Science Advances:http://advances.sciencemag.org/content/3/8/e1700718.full