イベント
- 開催報告
- 2016
「家族でナットク!理系最前線シンポジウム2016」
1.概要
日時:2016年10月29日(土)13:30-17:00
場所:東京大学本郷キャンパス 工学部2号館221号講義室
参加者: 約100名(中学生15名、高校生24名、保護者および家族約50名)
講演者:
林裕子(山口大学特命教授)
北垣亮馬(東大工学系建築学専攻講師)
脇村由香(ヤンセンファーマ研究開発本部)
坂本織江(上智大学理工学部准教授)
出席者:
東大
南風原理事、紺野副理事(男女共同参画担当)、松木特任教授(男女共同参画室副室長)、松本武祝教授(農学部、男女共同参画室進学促進部会長)
人事企画課事務 3名
工学系男女共同参画委員会委員 6名
学生TA(講演+運営7名、運営サポート1名)
理・生物学科B4、理・生物学科B4、薬学系M2、農・水圏生物科学専修B4、農・農学国際専攻M2、工・システム創成M1、工・応化B4、工・電気系D3(運営サポート)
2.実施内容
Web上で約3カ月前より概要を発表するとともに関係各所にもポスターを配布し、参加者を募った。募集人数は女子中高生100名、保護者・教員70名とした。web経由の参加登録者は、保護者を除き83名であった。当日は中高生39名(女子中学生15名、女子高校生24名)およびほぼ1.3倍程度の保護者と家族が参加した。母親と二人での参加が多い印象であるが、父親や兄弟姉妹を含む一家での参加や生徒単身での参加も見られた。また、学外関係者として6名、東大関係者として20名(うち工学系男女共同参画委員6名、学生TA7名)が参加した。
表1に当日の実施内容を示す。13:30に集合し、南風原朝和理事による挨拶の後、林裕子氏による基調講演、北垣亮馬氏による模擬講義、脇村由香氏、坂本織江氏による講演2件、在学生7名による大学生活紹介が続き、松本武祝教授による挨拶で閉会された。閉会後は20分程度の短いものとなったが、在学生、教員と参加者が懇談する時間を設けた。
林氏による基調講演「女子の理系選択における母親・父親の影響とは?」では、日本の様々な分野におけるジェンダーギャップの現状がデータとともに示された後、女性参画による多様性や女子学生の理系選択を促進するための取り組みと課題が提示された。ご自身の研究者、親としての経験にもとづく話題も盛り込まれており、参加する女子中高生と保護者の双方に印象深く伝わったようである。北垣氏による模擬講義「水、泡の力と建築材料」では、水面に働く力や現象が参加者との対話式問答とともに分かりやすい言葉で説明された後、現在の建築材料への応用研究が紹介された。知的探求心で進める研究の意義と楽しさが参加者に伝わる熱意のある講義であった。脇村氏による講演「進路選択から新薬開発に携わるまで」では、ヤンセンでの薬事に関する仕事の説明とともに、学生時代、就職活動の際の経験談やその時々で悩み考えたことを丁寧にお話しいただいた。自分の力で進路を選択し企業で子育てと仕事を両立されたお話は、女子中高生にむけた力強いエールとアドバイスになると感じられた。坂本氏による講演「電気をつくる、電気を届ける」では、発電と送電の仕組みやご自身の研究内容の説明とともに、数少ない電気系女性研究者としての経験談や今思うことをお話しいただいた。社会を支える研究の重要性、その道のプロフェッショナルになることの意味が中高生にも伝わる有意義で楽しい講演であった。
学生講演では、講演者が現在携わっていることや、どのような動機でその分野を選んだかを身近な言葉で分かり易く紹介したものである。研究の面白さ、学科の課外活動の充実ぶりなど、中高生にとっても楽しい大学生活の様子が感じられたようである。その後の質問タイムでは、入学後の留学機会や苦手受験科目の克服の仕方などについて、質問があがった。これに対して学生が経験談と実感を交えて丁寧に応答し、大変活気のある雰囲気で質疑応答が行われた。
予定より総講演時間が20分ほど伸びたため短い時間となったが、閉会後には講義室にて参加者とTA、講演者、教員を交えた懇親会を行った。参加者は進路を決めたきっかけや勉強方法、普段なじみのない「研究室」での生活などについて年齢の近い学生達にざっくばらんに質問していた。和やかな雰囲気での交流は閉室時間まで続き、参加者にとって東大理系学部への進学に向けての強い後押しとなったと思われる。
図1 基調講演の様子
図 2 在学生による大学生活紹介と質問タイム
表1 スケジュール
時間 |
内容 |
場所 |
13:30 13:35
14:10 |
開会挨拶 南風原理事 基調講演 林裕子氏(山口大学・特命教授) 「女子の理系選択における母親・父親の影響とは?」 模擬講義 北垣亮馬氏(東京大学・講師) 「水、泡の力と建築材料」 |
工学部2号館221講義室
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14:50 |
休憩 |
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15:00
15:45
16:15 |
講演① 脇村由香氏(ヤンセンファーマ研究開発本部) 「進路選択から新薬開発に携わるまで」 講演② 坂本織江氏(上智大学・准教授) 「電気をつくる、電気をとどける」 在学生からみなさんへ 理学系:B4、B4 農学系:B4、M2 工学系:B4、M1 薬学系:M2 閉会挨拶 松本教授 |
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16:20 |
懇親会 |
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17:00 |
アンケート回収、片付け、閉室、解散 |
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3.アンケート結果
当日はアンケートを配布し、解散時に回収した。参加者のうち、中高生31名、保護者32名より回答を得た。図4に示すように、参加者の多くはイベントの内容や理系進路選択に興味をもち参加している。また、保護者に勧められたという回答も30%にのぼり、保護者の問題意識が伺われる。図5,6に理系進路選択への意識がどのように変化したかの回答結果を生徒、保護者ごとに示す。大多数が本イベントにより理系の職業への肯定感が高まったと答えている。女子中高生の理系進路選択に対する支援に関して拡充が望まれる情報についての回答結果(図7)を見ると、進学先や就職先についての幅広い情報提供への要望に加え、理系女子学生や卒業生の本音を聞きたいという回答(20%)や類似イベントの情報への要望(15%)も多い。自由記述欄にも「多彩な学生の声とOGの方々の声が聞けた」「できるだけ数多くの”例”を聞きたい」「もっと時間をかけて聞きたかった」などの意見が数多く寄せられており、今回のイベントが有効であったとともに、引き続き多様なロールモデルの提示がのぞまれているといえよう。
4.まとめ
本イベントでは、基調講演1件、模擬講義1件、東大OGによる講演2件、在学生7名による大学生活紹介を行うとともに、最後に懇親会による参加者、講演者、女子在学生および教員の交流の機会を設けた。アンケート結果からは、イベントが全体的に非常に好評であったことが伺えた。特に、東大OGや在学生の具体的なお話により理系職業や大学生活に対するイメージが沸き、進路選択の参考になったとの意見を多く得ることができ、今回のイベントが女子中高生の進路選択に参考になったと考えている。できるだけ数多くの多様なバックグラウンドを持つOGや女子学生にもっとお話しを聞きたい、という要望が生徒保護者とも総じて多く、このようなロールモデルを提示する機会を継続的に提供することの必要性が実感される。
図4 何故このイベントに参加しようと思ったか(中高生)
図5 科学技術を必要とする職業に就きたいと思うようになったか(中高生)
図6 女性が理系職業に就くことに対するイメージの変化があったか(保護者)
図7 女子中高生の理系への進路選択を支援するうえで、充実が望まれる情報(保護者)