「世界一の研究現場で見つけた喜び」工学女子、夢を語る!

工学部って、男子ばかりで男性社会じゃない? いえいえ、それは大いなる誤解。東大工学部の女子学生はしっかり存在感を示している。その証拠に、3人の工学女子の素敵な研究生活を紹介しましょう!きらきらと輝く、彼女たちの夢とは?“女子”だから実現できる“Change the World”とは?


横浜の町づくりに夢中です

東京大学工学部 都市工学科 都市計画研究室4年 梶原安希子さん

都市計画の専門家である父の影響で、町歩きが好になったという梶原さん。昔は旅行などに行くたびに町のうんちくを語る父がちょっとうっとうしかったが、いつの間にか自分も町が大好きに。

未知の領域に挑む研究生活。それぞれの夢に向かって前進!

“新しいこと”に挑戦する研究の喜び

工学部というと男子学生ばかりで、女子が少数派というイメージ。工学部を目指す女子には不安もあるのでは?

そこで、東京大学の3人の工学女子に、その実態を語ってもらった。登場するのは、機械工学専攻・博士課程3年の上野藍さん、応用化学科4年の沼田恵里さん、都市工学科4年の梶原安希子さん。

―― まず、みなさんの研究内容を教えてください。

上野 私は、人工衛星に搭載する宇宙用の非常に小さなラジエータを研究しています。ラジエータは、衛星内部の熱を宇宙空間に放出する放熱板で、衛星の窓≠フようなもの。私はこれを、MEMS(メムス/マイクロマシン)という技術を応用して開発しています。4年生のときには、JAXA(宇宙航空研究開発機構)で小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトにも参加させていただきました。

沼田 私の専門は有機化学で、上野さんに比べると基礎研究に近いですね。人工の分子を自己組織化させ、大きな球体の化合物をつくる研究をしています。

梶原 私はあまり理系っぽくない分野で(笑)、都市計画研究室で町づくりを学んでいます。研究テーマは「横浜の異国情緒」。例えば、近代建築や洋館のある地域に制定する景観ガイドラインを考えたり、それを商業的に活用する事業スキームを提案したりします。

沼田 都市デザインとか、かっこいいですね! 実験漬けなので、そういう大きなテーマがうらやましいです。

上野 化学は実験がハードですよね。

沼田 反応を見るのに一日かかったりするので、大学に泊まり込む人もいます。その大変さも、化学の楽しさの一つですが(苦笑)。でも、この研究が成功したら新規化合物が誕生します。こうした未知の領域に、4年生から挑戦できるのは、やりがいがありますね。実験は、上野さんも大変じゃないですか?

上野 MEMSラジエータは完全に新しい技術なので、測定装置から何からすべて自分でつくっています。学会で「男前なプロセスですね!」って言われました(笑)。でもこれは非常に重要なことで、自分でテーマを決めて、自作して実用化を目指すっていう、研究のプロセスすべてを経験できます。厳しいけど、本当に楽しいですね。

女子だからできる研究スタイルがある

―― 研究テーマには、みなさん以前から興味があったんですか?

梶原 私は昔から町歩きが大好きだったんです。サークルも地理部です。化学系は、化学生命とか化学システムとかいろいろありますよね? 沼田さんは、なぜそのなかで応用化学を選んだんですか?

沼田 それ、よく訊かれます。応用化学は、有機・無機化学、超伝導、物理化学と一番幅広く勉強できるので、いいなと。

上野 私は、中学時代からずっと宇宙にかかわる仕事に就きたいと思ってきました。宇宙飛行士になった毛利衛まもるさんの、「宇宙からは国境線は見えなかった」っていう言葉に感動したのがきっかけです。こんなニクい台詞を言える職業はほかにない!私も何とかして宇宙に行くぞ!!と。

―― 工学部は男女比率でみると、女子学生の割合が少ないのですが、研究のうえでハンデを感じたことはありますか?

沼田 待遇差はまったくないですよね。

上野 ええ。逆に、女の武器が役に立つことも多いと思います。色気ではなく(笑)、女子はやはり、お喋りして人と付き合うのが好きですよね。研究では分野を超えて協力する必要が多々ありますが、そういうときに女子がうまく調整役になれると思います。

梶原 それはすごくわかります。フィールドワークで住民の方と直接お会いしたりすると、みなさん女子学生相手のほうが、話しやすいみたいです。

上野 研究テーマにも、女子ならではの視点が表れるかもしれませんね。私は、自分のテーマを「アグレッシブ」と評されたことがあります。宇宙工学、機械、電気など多様なものを融合しているという意味で、これは私が女子だからこそ選べた研究かなと思います。男子は、一つの研究対象をトコトン突き詰めるのが得意で、一方女子は、いくつもの対象を総合的に捉えることができます。一般論ですが、実際の現場でもそれを感じます。男女の能力に優劣はありませんが、役割分担すればより効率的に研究が進むのではと思ったりします。

人工衛星の“窓”を開発してます

東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 熱流体工学研究室 博士課程3年 上野藍さん

研究のかたわら、工学部広報室のアシスタントも務める。学生がつくる広報誌『T time!』の編集や、小・中・高校生に工学の楽しさを伝えるテクノサイエンスカフェ≠フ企画に参加したりと大活躍。

大きくて美しい化合物をつくっています

東京大学工学部 応用化学科 有機化学・錯体化学研究室4年 沼田恵里さん

中学時代から宇宙を目指し、学部では応用物理を学んだ。学部時代に参加したJAXAのプロジェクトが、熱の研究を始めるきっかけに。現在、航空宇宙工学専攻の研究室とも共同で研究を進めている。

世界一を目指して。毎日が金メダル!

―― 3人とも、とても充実した研究生活を送られていますね。ぜひ、みなさんの今後の目標を教えてください。

上野 中学時代の夢を叶えるべく、NASA(米国航空宇宙局)の研究員になりたいです。実は少し前に、NASAを突撃訪問しました。自分の技術が通用するのか、確かめたかったんです。偉い先生方にお会いして緊張しましたが、私のような一学生に対しても、すぐにセミナーを開いて研究発表させてくれました。質問の嵐で、すごく刺激的な体験でした。

梶原 私は大学院には行かず、横浜市役所に勤めて横浜の都市デザイン行政に骨を埋めたいと思っています。横浜の町が本当に好きで、町の魅力をさらに引き出すにはどうしたらいいのか、いつも考えています。空間や建物のイメージなのか、色彩なのか。人の感性をきちんと分析して、それに適した法律や制度を研究していきたいです。

沼田 お二人ともすごいですねぇ。私は、まだはっきりした未来像がなくて。博士課程に進んでもいいし、研究を活かして就職するのもいいかなと。とにかく、今の研究を楽しんでいます。

上野 研究が好きなのは、何よりもすばらしいことですよ。それが一番大切。研究は、頑張れば頑張っただけ、成果が返ってきます。しかも、自分の出した成果が世界一になる可能性がある。努力すれば、つねに高い成果が目指せる。オリンピックなんて目じゃありません。私たちの研究は、毎日が金メダルです!

沼田 上野さんのお話を聞くと、博士課程、憧れますね。かっこいいです!

上野 おすすめですよ。アメリカには中国や韓国の女性研究員がいっぱいいました。私も彼女たちに負けないように、沼田さんや梶原さんをはじめ、日本の工学女子たちと力を合わせて、いっしょに頑張っていきたいですね!


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