No.1を目指し加速する国際化プロジェクト


工学のターゲットである産業界では、環境エネルギー問題などがグローバル化し、国際的な発言力、存在感の確保が必須となってきた。現在、求められるのは、異文化の人々とも違和感なくコミュニケーションが取れる力を持った人材だ。工学部・工学系研究科では、長期プログラムを組み、教育環境の真の国際化を推進している。

教育の国際化を目指し、国際交流を活発化

銀杏並木が黄金色に色づき始めた2011年11月7〜8日、世界の工学系トップ大学の学部長や学長たちが、本郷キャンパスに集った。ヨーロッパからはスイス連邦工科大学チューリッヒ校にインペリアルカレッジロンドン、スウェーデン王立工科大学。米国からはマサチューセッツ工科大学とカリフォルニア大学バークレー校が参加。「Deans(学部長)Forum on Engineering」と 銘打たれたこのフォーラムは大学院工学系研究科が主催。これからの工学教育のあり方と連携のかたちを探る目的で、2日間にわたって活発な議論が交わされた。

初めての試みとなったこのフォーラムの実現は、工学部・工学系研究科が進めてきた国際化の進展なくしてはあり得なかった。近年の国際化推進の象徴とも言えるのが、’11年4月にそれまでの工学系研究科の国際関連業務と教育を再編し、国際工学教育推進機構という組織を新たにスタートさせたこと。「Deans Forum」も、その新機構傘下の一つ、国際事業推進センターが運営を担当した。

国際事業推進センターは、「Deans Forum」のような国際交流の推進や外国人研究者の受け入れ支援、留学生の日本語教育、さらには日本人学生の海外派遣支援まで、東京大学のなかと海外を取り持つ業務全般を行う組織。センター長の前川宏一教授(社会基盤学)は、国際化の推進を「東大が工学で世界一になるためには必須」と言い切る。

「研究ではそれぞれの領域で世界のトップと充分に肩を並べていると思います。しかし、人材求心力はどうか。例えばMIT(マサチューセッツ工科大学)と東大の両方に合格した外国人がいるとしたら、まだまだMITを選ぶ人が多い。選んでもらうためにはキャンパスが国際化していないとダメです。学生だけではありません。先生や研究者のレベルでももっと流動性を高める必要があります。世界中から研究者がきて、長く滞在して交流し指導しているのが世界トップの大学の姿。研究だけでなく教育の国際化も、世界ナンバーワンになるためには必要なんです」

そのための施策として、グローバル30をはじめとする英語による留学生特別プログラム群がある。留学生が専門分野ごとに講義や研究指導を英語で受けることができるもので、工学系研究科では半数以上の専攻で実施。書類選考や遠隔面接で入学が審査され、来日してすぐに大学院課程に入学できる。事前の日本語習得に時間をかけずに学位取得に挑戦できるので、留学生にとって魅力的なプログラムとなっている。

工学系トップ6大学 世界の工学系トップ6大学が集い、工学教育を議論した。

インターナショナルフライデーラウンジ インターナショナルフライデーラウンジは、
留学生と日本人学生が気軽に話し合う場。

アジアの環境リーダーたれ

APIELの取り組み
工学系研究科都市工学専攻では、独自の国際教育プログラム(APIEL)も実施している。アジアにおける環境リーダーの育成を目指すこの取り組みは、新領域創成科学研究科との共同運営で2008年から始まったもので、環境リーダーに求められる環境問題認識やリーダーシップスキルを学ぶ講義、アジアの各地に赴くフィールド演習(旅費補助あり)などを行う大学院生対象の専門的プログラム。すべて英語で開講され、修了生には認定証が授与される。

英語教育を充実。国際化への10年計画

国際事業推進センターが赤門の内と外をつなぐプロジェクトを行う拠点なら、赤門の内側、キャンパス内での国際化を担当するのが、同じく国際工学教育推進機構傘下のバイリンガルキャンパス推進センターだ。

同センターの国際化推進に関するミッションは、学生・教員の国際コミュニケーション能力の強化。なかでも国際言語としての英語力の向上を目指す。
下のグラフからわかる通り、工学部・工学系研究科は、東京大学のなかでも、国際化が進んでいる。博士課程ともなれば、留学生の割合は40%以上にもなり、学生が英語でプレゼンを行うのも当たり前の光景だ。ただし、大学院に比べて学部の留学生が少なく、学生が英語に触れる機会が少ないのが課題。教養課程を終えれば本郷キャンパスでは英語を学ぶ講義はなく、3年次からの語学学習は独学となっている状況だった。

この穴を埋めるため、バイリンガルキャンパス推進センターは、民間の語学学校と提携して英語教育を行うSEL(Special English Lesson)というプログラムを行っている。講義終了後、夜間に学内で(しかも比較的安価で)授業を受けられるとあって人気を博している。この他にも、大学院を対象とした科学・技術英語の講義・演習や、WEBによる自己学習教育システム「SNOWBALLS」の開発、留学生と日本人学生の交流を図る「International Friday Lounge」の実施など、多彩なプログラムで学生の英語能力強化をサポートしている。

さらにこれらの英語による教育プログラムに加え、大学院・学部の講義の英語化の推進、世界的なトップランナーの教員採用、事務・技術部門のバイリンガル化などを絡ませ、「バイリンガルキャンパス10年計画」を’09年からスタート。国籍や出身地域の別なく研究できる環境整備を目指す東京大学全体のパイロットモデルとして、真の国際化を目指している。

国際求心力を強化する国際工学教育推進機構

東京大学工学部・工学系研究科では2011年4月、国際工学教育推進機構を設立し、国際求心力の強化を目指して活動している。同機構の設立はこれまでの工学教育推進機構を再構築し、国際的な工学教育研究の基盤をつくるのが目的。
傘下に3つのセンターを持ち、それぞれが連携しながら国内外の優秀な学生や教員を結集させ、世界との国際教育の連携を推進していく。

国際工学教育推進機構の組織図

3つのセンターの傘下には現在(2011年12月現在)8つの部門があり、さらに複数のプロジェクトが存在する。工学系の学生は多くの機会を通じて、国際教育を受けることができる。

東京大学 学部・大学院の学生・留学生構成比 ※2011年5月1日現在

国際事業推進センター長の前川宏一教授国際交流事業を担当する国際事業推進センター長の前川宏一教授。
「工学系研究科では学生諸君の英文論文執筆や海外での研究発表など、研究活動の国際化は浸透してきましたが、教育環境の国際化には課題が少なくありません。学生や教員の流動性を高めることも重要事項です」と、工学世界一実現へ意欲を語る。

バイリンガルキャンパス推進センターのスタッフ世界に開かれたキャンパスを目指し、バイリンガルキャンパス推進センターのスタッフによって学生の国際競争力強化や教育カリキュラムの開発、教職員の国際化などが進められる。この「バイリンガルキャンパス10年計画」は、工学系をスタートに、全学への展開、最終的には複数大学を含めた全国展開をも視野に入れている。


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