縄田和満 教授|システム創成学科 学科データを見る

縄田教授のCHANGE THE WORLD|正しい分析データの力 で、社会の進歩を阻む縦割り≠打破

Profile
地球システム工学専攻 システム創成学科
Ph.D.,Economics
1957年千葉県生まれ。専門は計量経済学。計量経済学の本場の米国で教育研究に携わる経験を持つ。’79年、東京大学工学部資源開発工学科卒。’86年、スタンフォード大学経済学部博士課程修(Ph.D., Economics)。シカゴ大学の経済学部助教授などを経て、2000年に東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻・工学部システム創成学科教授に。趣味は囲碁。

縦割り文化の壁を破る実現までの3STEP

  1. STEP1|社会経済のデータ解析技術を研究、そのモデルを開発する
  2. STEP2|社会問題となっている分野のデータをモデルに当てはめる
  3. STEP3|統計データを公表して分野を超えた議論を可能に。政策提言へ

統計で分析したデータは社会の共通言語です

数字がツールになる。

問題の解決や将来の予測をしようとするとき、いろいろな考えや意見が出てくる。このときに必要不可欠となるのが、統計的に分析したデータだと、縄田和満教授は強調する。

「例えば原子力発電。推進派から反対派まで、いろいろな考え方がありますよね。このとき、感情的に意見を言い合ってしまえば、考え方が安全か危険の両極端に分かれてしまう。最後は話し合いができなくなって、問題はいつまでも解決されないことになる。こうした状況を避けるためには、客観的な分析データが必要なのです。数字を土台にして話し合えば、冷静な議論が続けられ、解決の糸口が見えてきます」

2011年3月の大地震による津波によって起こった原発事故でも、過去の津波データを分析して議論する機会がより多くあれば、対策ができていたかもしれないと、縄田教授は指摘する。
「データを統計的に扱えるということは、分野を超えて考え、議論できる共通言語を持つこと、そういう言語で話す力を得ることと同じです。現代の社会経済では、さまざまな分野で、たくさんのデータが蓄積されています。もし、これらのデータが正しく分析できれば、多角的な議論が可能になり、問題解決法や将来予測も見出しやすくなります。あらゆるところで、そうした取り組みを繰り返せば、社会はよりよいものになっていきます」

統計という技術によって社会のあり方を変えようとする縄田研究室。社会のシステムを工学的に考えていくシステム創成学科において、統計を専門的に教育しているこの研究室が果たす役割は大きい。

数字の分析だけでなく、その分析の手法も研究

統計とは、生データにフィルタをかけるようなものと縄田教授は話す。

「よく勘違いされるのですが、コンピュータにデータを打ち込めば、分析データが自動的に出てくるというものではありません。分析モデルというフィルタをかけないと、分析データは出てきません。この分析モデルというのはいろいろあって、もし選択を間違うと歪んだ分析結果が出てしまいます」

分析モデルの新しいタイプを開発したり精度を高めたりするために、世界中の研究者が、日々、研究開発をしている。縄田研究室でも、分析モデルの研究は主要テーマの一つ。縄田教授はサンプルの偏りを補正しながら分析を行うための最新手法である「トービット(Tobit)モデル」の専門家でもあり、この研究開発にも力を入れている。日本には、分析モデルを基礎的に研究開発する専門家や研究室が少ないという。この研究室は、統計の分析モデルを基礎から学べる日本では数少ない場所だ。

「研究室のポリシーは、学部生でも統計モデルの基礎的な研究開発にしっかり取り組むことです。基礎力があれば、さまざまな分野に応用できます。データを扱わない分野は、ほとんどありません。データを扱える人は、どんな分野でも求められます」と縄田教授。学生の研究テーマは、金融商品のデータ分析から太陽光発電の発電量の分析、中国のレアアース生産量の分析まで、とても対象分野が幅広いのが特徴だ。

データ分析の力を身につけ、社会に羽ばたいていく

縄田研究室が、近年、精力的に取り組んでいる分野の一つに医療分野がある。高齢者がますます増える日本では、今の医療制度を放置しておけば、確実に制度は破綻してしまう。医療の効率化は避けられない状況だ。
「でも、医療費を単に削減すれば、医療サービスの質が落ちるでしょう。質を落とさず医療費を抑えるポイントは、医師や看護師を余っているところから不足しているところに回す工夫をすることです。このときに役立つのが、やはり分析データなんです」

例えば、同じ病気でも、入院日数を調べると、病院によってかなり違いがあるという。一概にはいえないが、入院日数が長い病院は、不必要に患者を長く入院させている可能性がある。
「私たちは白内障という病気に注目しました。この病気は、診療がシンプルで、治療効果も明確。すぐに退院させる病院とそうでない病院の違いが、わりと見えやすいのです。その入院日数データを集めて平均を出し、病院ごとに並べて公表しました。そうしたら、入院日数が長かった病院が患者を早く退院させるようになったのです」

平均の数を出しただけで、社会は変わる。これが分析データの数字が持つ力強さだといえる。
「多くの日本の社会問題の根底には、縦割り文化の弊害が見られます。各専門で縦割りがあるから、専門外の人は何をしているかわからないし、壁を超えた議論が少なくなり、問題があってもいつまでも解決できない。そうした分野が多いから、閉塞感に包まれていくのです。この縦割りの壁を打ち破る力を持つもの、それが統計の分析データなのだと思っています。感情的にならず、正しい分析データをもとに話し合う文化が必要です」
データ分析ができるジェネラリストがいろいろな分野で増えることが、この社会をよくすることにつながっていくと、縄田教授は話す。この研究室で基礎に裏打ちされたデータ分析力を身につけた学生たちは、やがて卒業し、官公庁や金融機関、メーカーなど、さまざまな分野で活躍するようになっていく。

「統計というデータ処理は、数学などを駆使する理系の学問で、同時に社会経済が対象。大事なのは、理系も文系も両方に足を置いて考えられること。理系と文系の壁をまず打ち破ることが、この閉塞感を打ち破ることにつながります。数字だけ見ないで、社会経済の対象もしっかり見る。学生にはいつもそう言っています」
縄田教授は、分析データを通して、日本社会の将来を見つめている。


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縄田教授の研究 Keyword 4|社会を変える理系ジェネラリスト育成の場

  1. Keyword 1|最新の分析モデル「Tobitモデル」
    上は、統計学の最新分析手法「トービットモデル」に関する計算式。例えば、人気投票など、積極的に行動選択した人のデータ集計だけでは全体を表す分析データにならない。このモデルは、サンプルの偏りを補正して分析できる。
  2. Keyword 2|医療から天候まで幅広い分野が対象
    統計データ分析の手法は、金融分野でよく使われるが、縄田研究室では社会経済の多くの分野を扱う。医療、エネルギー、労働経済、家計消費行動、金属、天候デリバティブなど。データ蓄積のある分野なら、すべてが対象だ。
  3. Keyword 3|分析データを用いて社会チェンジの政策提言
    分析データを使って、社会をよりよくする。これが、縄田研究室の基本方針。データの統計的な分析をゴールにするのではなく、政策提言をして社会に分析データを提供することが最終目標。データが社会を変え、国を変える。
  4. Keyword 4|価値観の違いがわかる理系ジェネラリスト
    縄田教授は東大の工学部を出て、アメリカで経済学の博士号を取得。国際学会でも、その名は知られる。学生には、海外に行くことや文系の学問を学ぶことをすすめる。広い視野の理系ジェネラリストこそ、統計のプロになれる。

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研究学生インタビュー

縄田研究室|則武 誉人さん 東京大学大学院 経済学研究科 修士課程2年|熊谷 勇人さん 東京大学工学部 システム創成学科 知能社会システム コース(PSI)4年生

扱う分野が広く、他にない専門性あり!

統計学は、学生たちにとっても分野を超えた共通言語となっている。

武さんは、経済学研究科の所属とか?
はい。為替に興味があって、他大学の理工学部からこの大学の経済学研究科に入学しました。だけど、為替よりもプラチナやパナジウムなどの金属に興味を持ち始めて、縄田先生を紹介されたのです。この研究室は、とにかく扱う分野が広い。他にない専門性が身につけられます。
証券取引所に内定しています。ここで学んだ統計の手法が役立つと思っています。卒業生を見ていると、金融関係に就職するほか、IT分野に進む人も多いですね。やはり、データを分析したりシステムを構築したりする能力を活かせる分野に進むようです。
1〜2年生に助言するとしたら?
統計で求められる数学力は、数学や物理を専門にするほどではありません。ただ、数学が苦手だと、ちょっとつらいかも。数学がある程度できて、社会経済に興味があれば、ここで学ぶとおもしろいと思います。

システム創成学科|「知」の再構築と統合化を目指してシステム・イノベーション - 新たな工学教育への挑戦 -

21世紀の人類は、環境問題、エネルギー問題、食料問題、人口問題などの大きな問題に直面している。これらの問題は、いずれも人類の存亡そのものにかかわるたいへんに重要な問題といえる。解決のためには、もはやテクノロジーを駆使するだけでは不可能となっており、立場や利害関係の異なる多くの人びとの複雑なシステムの最適解を求めることが必要となる。
システム創成学科は、そのような認識から、理学・工学の知識に加え、社会科学などの知識を集約し、社会の要請に応える解決策を創造する問題解決能力を養成することを教育上の最大の目標としている。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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