山本晃生 准教授|精密工学科 学科データを見る

山本准教授のCHANGE THE WORLD|不思議なデバイスで新しいインタラクションを実現する

Profile
精密工学専攻
精密工学科 博士(工学)
1994年、東京大学卒業、’99年、同大学院博士課程修了(精密機械工学専攻)。2005年より現職。メカトロニクス・アクチュエータ・触力覚インターフェースの研究を行う。不思議な動きをする機械に魅せられ、それを研究し続けてきた。「僕らは未来への種を育てていると思うのです。でも時々『手品のタネを研究しているのですか?』と言われることもあるんですよ(笑)」

新しいインタラクション実現までの3STEP

  1. STEP1|静電モーターなどの不思議なデバイスの性能が上がる
  2. STEP2|医療などの異なる分野の機器に応用される
  3. STEP3|人と機械の新たなインターフェースが誕生する

おもしろいと感じたら、それが研究対象になる

ハプティック技術を応用した非接触運搬装置。

おびただしい数の機械が所せましと並んでいる。棚はもちろん、工作机の上も下も部品だらけ。そこはまるで「発明家の部屋」だった。
部屋の主は、先端メカトロニクスを研究する山本晃生准教授である。
「なんだか不思議な動きをするなぁって思ったり、おもしろいなと感じたり。私の研究テーマはいつもそんな好奇心から生まれます」と笑顔で語る山本准教授の専門はアクチュエータだ。

一般的にアクチュエータはモノを動かし操る装置として知られ、家電や自動車などに欠かせない部品のひとつだ。しかし山本准教授の研究はひと味違う。
「アクチュエータとはわかりやすく言えばモーターです。ただ、私の研究室では、静電気を利用し、従来とは違うおもしろいものをつくれないかと考えています……」
そう言うと、山本准教授はパソコンを取り出し、ある装置のデモ画面を見せてくれた。2枚の薄いフィルムに電圧をかけると、重なり合ったフィルムの上の部分がすごい勢いで反復運動を繰り返す。まるで手品のようである。

これが静電アクチュエータという装置だ。静電気の力をうまく活用すれば、薄くて軽い構造や、柔軟性・透明性のあるデバイスを実現できる。そのため将来的にはロボットの人工筋などへの応用も検討されているそうだ。
「私が学生だった’90 年代から、東大の精密工学で受け継がれているものです。当時この薄い装置がなぜこんな動きをするのかと興味が湧いて。以来、この不思議さに取りつかれています」

ただ、「悩ましいのが世にあるメカトロニクスのほとんどが既存の磁気や油圧のアクチュエータで事足りていること」と山本准教授は苦笑いする。しかし今、強磁場での利用にも適しているという静電気の特性を活かし、新たな研究が始まっている。そのひとつが脳科学への応用だ。

自在に曲がる柔らかい静電アクチュエータ。

磁力を使わない特性がMRIの実験の場で活躍

静電アクチュエータは駆動するのに大きな電圧を必要とする一方で、磁気モーターと比べて非常に電流が少なくて済む。この特性を応用し、現在スイスのEPFL(ローザンヌ連邦工科大学)と磁気共鳴画像診断(MRI)における脳科学実験への応用に取り組んでいる。

「近年、脳科学ではMRIのなかで音楽を聴かせたり、映像を見せることで人間の脳の活動を解析しようという実験が進んでいます。そこで、メカトロ系のデバイスをMRIのなかで使うことができれば、運動に関する脳の機能も可視化できるのではないかと考え、そのためのデバイスを静電アクチュエータを応用して開発しています」
本来、MRIとは磁場と電波を使い、体内の画像を撮影する医療機器である。そこには強力な磁場があるため、磁気モーターを使うと大事故を引き起こす危険性がある。そこで白羽の矢がたったのが、静電気で動くアクチュエータだったわけである。

また山本研究室では、ハプティック(力覚提示)デバイスの研究も進めている。ハプティックデバイスは、操作する人に対して力のフィードバックを与えられるデバイスのこと。簡単に言うと、その場にはない物体に実際に触っているかのように感じさせてくれる装置だ。このハプティックデバイスがつくりだす、バーチャルな触感≠フ向上を目指している。
「従来のハプティックデバイスは、ジョイスティックを持って操作したときに仮想世界から返ってくる反力の加減によって物の力具合が感じられるものでした。つまりレバー越しに架空世界を探索する感じなので、素手で直接感じるようなリアルな感覚が得難かったんです」

バーチャルでの指の触感をいかに再現するか

そこで目をつけたのが、直接手で触ったときに感じられる滑らかさやザラザラ感といった材質感だ。
「最近とくに注目しているのは柔らかさ≠フ触感。指先にリアルな柔らかさ感を与えるには、バネのようなモデルを使って、力と変位の関係だけを考えてもダメなんです。実際の触感で大事なのは、指と物との接触状況です。具体的には、柔らかいものに指を押し込むと包み込まれるようになり接触面積が増えます。この接触面積変化を再現すると柔らかい触感が再現できるのです。そこで指先に与える圧力分布や、時間的な応答などにも着目しながら、より現実に近い触感を再現する方法を検討しています。ほかにも、ペタペタとした感触だったり、材質の温度感だったり、指先で感じるさまざまな感覚について、その再現方法を研究しています。それらをどのように統合していくかが、これからの課題ですね」

まだまだ発展途上の段階ではある。しかし、精度が上がれば遠隔医療の触診などに役立つことも期待されている。またゲームのようなエンターテインメントの世界にも広がっていく可能性がある。
静電アクチュエータとハプティックデバイス。この2つの研究テーマは一見、共通点がないように見えるが、「人と機械のインタラクションという意味では同じなんです」と山本准教授。

「なんだかおもしろそうと思わせる特性を持っているのも共通していますね(笑)。この特性を追究し、不思議≠ナ、なおかつ世のなかに役立つ°Z術を生み出す。それが私の夢ですね」
おもしろさを追究してつくりあげたデバイスが、どんなものとつながり、新しい価値を生み出すのか。山本准教授はワクワクしながら、「発明家の部屋」で研究を続けている。


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山本准教授の研究 Keyword 4|さまざまな分野に応用が期待される不思議なデバイス

  1. Keyword 1|触らずに物を運ぶ!?まさに夢の運搬装置
    非接触搬送を目的としたハプティックデバイス。磁気力と静電気力を重力と釣り合わせ、物体を空中に浮かせて保持させている。手を触れずに物を移動させることができるため、ガラス基板の搬送などへの応用が期待される。
  2. Keyword 2|脳科学での応用を目指し、スイスで進む共同研究
    スイスのEPFLと共同開発を行うMRI用のデバイス。MRIは医療診断以外に、脳科学やバイオメカニクスといった基礎研究の分野でも利用されることが多く、非磁性の静電アクチュエータの活用が期待されている。
  3. Keyword 3|指先に感じる触感をリアルに再現
    バーチャルリアリティや遠隔操作の分野を中心に行われてきたハプティックデバイスの研究技術をさらに追究し、よりリアルな触感を検証中。物に触れたときの力だけではなく、指先で感じる材質感や固さなどが研究対象に。
  4. Keyword 4|静電気を使った“不思議な”モーター
    静電アクチュエータの特性を応用した紙での実験。電極が並んだフィルムの上に紙をのせて電圧を流すと、紙がその場で回転を始める。また紙を反復運動させたり、スライドするように搬送させることも可能。

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研究学生インタビュー

山本研究室|木村 文信さん|東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 博士課程1年

研究の様子

予想もしなかった発見が生まれる。それがこの研究のおもしろさ!

山本研究室で先端メカトロニクスを研究している木村さん。高校生のころから興味を持っていたロボットに想いを馳せ、現在ハプティックデバイスを使った触感ディスプレイ≠フ研究を行っている。

精密工学に興味を持ち始めたきっかけは?
昔からNHKの『ロボコン』などをテレビで観るのが大好きでした。ただ、自分で何かをつくるのは縁のない世界だと思っていたのですが、精密工学に進めばその可能性があることを知りました。それから、精密工学への興味も高まっていきました。
この研究室を選んだ理由は?
やはり自分の手でロボットがつくれるというところです。この研究室では可能なかぎり自作するというルールがあり、設計から加工、組み立てと、ほとんどの作業に携われるんです。ひと昔前の自分からしたら考えられないことですが、それが僕にとっては新鮮で楽しい。それと駒場キャンパスにいたころから、山本先生の授業がとてもおもしろかったというのも理由のひとつ。素晴らしい指導者のもとで楽しく研究できるというのはとても大事だと思いますので、その意味でもこの研究室を選んでよかったと実感しています。
なぜ、触感の研究を?
最初はメカがつくれれば何でもいいなと思っていました。ただ、いろいろと学んでいくうちに、いちばん好奇心をくすぐられたのが、物体の手触り(=触感)を再現提示するメカトロニクスの技術でした。新しい研究分野で、やりがいを感じます。
実際に研究してみての印象は?
やればやるほど奥が深いです。それにこの技術は、精度が上がればきっといろんな分野に応用できます。専門的なところだと医療の手術に役立つかもしれませんし、大衆的な話で言えば、テレビ電話に触感≠ェ加われば、見て聞いて触れる新しいコミュニケーションツールができるかもしれない。工学は「これが世のなかの何に役立つのか?」ということを念頭に置いて研究する必要があると思いますが、実験を重ねていくうちに思いもよらない発見やひらめきが生まれたりもして、可能性を感じます。それが、おもしろいところだと思いますね。

精密工学科|「知的機械・バイオメディカル・生産科学」人と機械の未来をデザインする創造的なテーマに挑む。

1887年に造兵学科として設立された精密工学科。
その学科名からはカメラや時計など精密機械の研究をイメージするかもしれないが、研究内容は実に幅広い。日本が世界に誇るものづくりの基盤となる「設計・生産システム」「精密加工・計測」「メカトロニクス」といった分野はもちろんのこと、近年注目を集めるナノテクノロジーも研究領域に含まれる。また医用工学、健康科学、サイボーグ技術など、生体や環境と密接にかかわる分野でも、世界最先端の研究を行っている。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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