鹿島久嗣 准教授|計数工学科 学科データを見る

鹿島准教授のCHANGE THE WORLD|高度な予測技術で豊かで安心な社会を実現する

Profile
数理情報学専攻
計数工学科 博士(情報学)
1999年に京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻の修士課程を修了後、IBM東京基礎研究所に10年間勤務。2009年8月から現職に。これまで情報処理学会や人工知能学会などで数々の賞を受賞している。ツイッターではおやつに関する発言が多く、甘党である。

豊かで安心な社会実現までの3STEP

  1. STEP1|現実世界の実情を取り込んだ予測技術をつくる
  2. STEP2|予測にもとづくさまざまなサービスの実現
  3. STEP3|意識せず予測の恩恵を被る豊かで安心な社会

データを使って、ビジネスを動かし、私たちの未来を明るく照らす!

人との交流もショッピングも、今やパソコンの前で座ったままできる時代になった。それにともない、企業も新たな手法を使ったマーケティングに乗り出そうとしている。鹿島久嗣准教授が専門としている「機械学習」は、まさにそういった企業の需要にこたえる技術だ。今日の研究成果が、すぐにも実社会で大きな利益を生み出すかもしれない。ビジネスの、そして私たちの世界そのものの明日を変え得る、これから期待の研究分野である。

鹿島准教授は、10年間、IBM東京基礎研究所で研究員として働いた経歴を持つ。そこで大きな成果をあげる一方、もっと基礎的な研究をしたいという思いもあり、2009年8月に現在の研究室へと移った。若く、意欲あふれる新進気鋭の研究者だ。

「今はコンピュータの世界と現実が近くなってきています。今後、その融合が進むと、センサーからリアルタイムで収集されたデータを使って現実世界をコントロールする仕組みが、どんどん出てくるでしょう」と鹿島准教授。その仕組みの土台となるのが、機械学習の技術だ。ますます注目されるこの分野で、鹿島准教授は先頭を走っている。

数理モデルで試行錯誤。

人の購買行動を予測し、利益につなげる

機械学習は、人工知能の一分野である。「人工知能」と聞くと、人間の知能を持ったロボットをイメージしがちだが、実際には、人間の知能のような働きをコンピュータ上で実現することを目指す学問だ。そのなかで機械学習は、「経験から学習するコンピュータ・プログラム」をつくることを目的としている。

「オンラインショッピングサイトで買い物をすると、商品の下のほうに、この商品を買っている人はこれも買っています≠ニいうお薦めが出てきますよね。まさにそれが機械学習の技術なんです。過去のデータを集めて分析すれば、どういう人がどういう商品を買うか、傾向が見えてくる。ある種のマーケティングです」

つまり、膨大なデータ(=経験)から隠れた関係性や規則を見つける(=学習)、これをコンピュータにやらせるのが機械学習の技術というわけだ。
ネット広告の代理店との共同研究に取り組んだ実績もある。

「最近、ウェブページに広告が出てきますが、僕に対して化粧品の広告を出してもクリックはしません。僕が興味のあるものを表示してくれれば、クリックをする確率は高いし、買う確率も高くなる。過去の購入データをもとに、どういう人にどういう広告を出せばいいかを予測する技術を開発しています」

ネットワーク構造で複雑なデータ解析に挑戦

売り上げに直結するだけに、予測の精度を上げることは最重要課題である。では、精度を上げるにはどうすればいいのだろうか。
「先ほどのオンラインショッピングサイトでいえば、例えば親しい友人の買い物履歴のデータを加えれば、予測の精度は上がるかもしれません。ですが、従来の機械学習のアルゴリズムでは扱えないデータもあるんです。そういうデータを使えるように拡張することも、重要な研究テーマになります」

鹿島准教授が現在力を入れているのは「ネットワーク構造」の解析。ミクシィやフェイスブックなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)では、ネット上で人と人とが何らかの関係をもとにつながりを持っている。このような人と人、さらにはモノや出来事などとの有機的なつながりを表すのが、ネットワーク構造だ。

高度な予測技術で、私たちの未来を豊かなものに

「SNSが世のなかで注目されるようになってきたのはここ数年です。ネットワーク構造は従来想定されていなかったデータなので、解析の方法がほとんどない。こういう複雑なデータを扱えるようにして、見えていない関係≠予測する技術をつくっています。さらに誰と誰がいつ何をする≠ニいう、より複雑な関係の予測にも挑戦しています」
鹿島准教授はネットワーク構造を取り入れた予測技術研究の第一人者だ。SNSが登場するずっと前からネットワーク構造に注目して、重要な成果をあげている。

「SNSでも、最終的にはそこでお金を生み出す仕組みをつくらなくてはいけません。その鍵となり得る技術を僕たちはつくっているわけです」
SNSだけでなく、ウェブページのリンク、化合物中の原子間の共有結合、生体内のタンパク質間の相互作用、企業内の組織図……、私たちの現実世界は、ネットワーク構造であふれている。
「現実世界の実態を取り込んだ多種多様なデータを扱って、将来的には身の回りのあらゆるものを対象に、未来のことや見えていない関係を予測できるようにしたいと思っています」

予測技術を応用できるのは、先に挙げたようなオンラインショッピングだけではない。
「例えば自動車産業ですね。ドライバーが事故を起こしそうになった緊急の場面で、急ハンドルを切るのか、急ブレーキを踏むのか。それを『予測』できれば、事故は未然に防げるかもしれない」
それが工場なら、機械の故障を「予測」できれば効率的な生産ラインを維持できるだろう。医療に応用すれば、ある人が近い将来病気に罹るかどうか、それはどんな病気なのか、そんなことまで「予測」できるかもしれないのだ。
「予測技術が身の回りのあらゆるところに行き渡り、日常のなかでみんなが意識せずにその恩恵を被る。そんな未来を実現したいですね」
鹿島准教授は力強くそう語る。


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鹿島准教授の研究 Keyword 4|数学とプログラミングで予測を検証

  1. Keyword 1|現実世界を表現するネットワーク構造
    鹿島准教授はネットワーク構造を扱う日本のトップ研究者である。「新しい問題を見つけ、シンプルな数理的手法で解決する」のが研究スタイル。洗練された理論で、これまで扱えなかった対象まで解析可能に。
  2. Keyword 2|データ解析の要となる数理モデル
    まずデータから関係を予測するための方法を、数式を使って考える。ここまでは、紙と鉛筆で行う数学のステップ。「この式でいけるだろう」という数理モデルができたら、実際にこれで予測できるかどうかコンピュータで検証。
  3. Keyword 3|大規模データ解析を可能にするサーバ
    大量のデータを高速で処理。各自のパソコンをサーバに接続し、つくった数理モデルで、データから予測結果が出るかどうか調べる。計数工学科では、3年生以上にパソコンが無償貸与されている。
  4. Keyword 4|ビジネスで需要の高い技術が身に付く
    機械学習は近年ビジネスでの需要が急速に高まっている。インターネットが普及し、個人に合った広告やサービスが提供可能になったこと、多くの企業が蓄積したデータをビジネスに活用し始めたことが、その背景にある。

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研究学生インタビュー

鹿島研究室|梶野 洸さん|東京大学大学院 情報理工学系研究科 数理情報学専攻 修士課程1年

研究の様子

好きな数学を活かし研究者への道を目指す

計数工学科に進学したのはなぜ?
もともと数学が得意だったので、それを活かしたいと思っていました。ただ、数学自体の研究というよりは、数学を世のなかの役に立てる研究がしたかったので、この学科を選びました。
昔からパソコンは得意だった?
得意というわけではありませんでしたが、パソコンができなくても、授業でフォローしてもらえるので大丈夫です。最初はついていくのが大変ですけど、まったくパソコンができなかった人も、みんなそれなりに使えるようになっています。
普段の生活はどんな感じ?
朝の8時半くらいに研究室に来て、午後の6時くらいまで研究して帰ります。といっても、最近、心機一転して朝型に変えたばかりなんです。実験設備が必要ないので、人によっては家で研究している人もいます。でも、僕の場合は、家だとなかなか切り換えができなくて、午前をムダに過ごしてしまうので、なるべく朝早く大学に来て研究を始めるようにしています。
研究室の魅力は?
まだ3年目の研究室なので、とにかく部屋がきれいです。自分たちで意見を出し合い、設備を充実させました。あと、先生がまだ「先生」として慣れていないというと語弊がありますが、いい意味であまり干渉されないので、自由度が高いことも魅力です。
研究内容は?
最近、いろんな企業でクラウドソーシングというウェブサービスが使われています。これは、社外の不特定多数の人に仕事を委託する新しいタイプの雇用形態なのですが、なかにはサボる人や、ちゃんとできない人もいるので、返ってくるデータには質の悪いものも含まれています。そこで、これらのデータから規則や関係性を見つけ出し、信頼性のあるデータを予測するための技術を開発しています。
将来の進路は?
将来は研究者になりたいと思っています。就職する場合でも、企業の研究所などの研究職を志望しています。博士課程に進学するか、就職するか、今悩んでいます。どちらにしても、好きな研究をがんばっていきたいです。

計数工学科|数学・物理・情報の諸概念をベースとして、個別分野に依存しない、科学技術の根幹となる普遍的な概念や原理の提案、および系統的な方法論の提供を目指す。

計数工学科というユニークな学科名は、「計測+数理」に由来する。
つまり、数学・物理・情報をベースとして、世のなかのさまざまな現象に潜む「普遍的な原理・方法論」を構築することを目指している。特徴的なのは、つねに「現実の問題への応用」という工学的側面を重要視していること。ここで得られる知見や技術は、21世紀の社会を支える科学技術の根幹となりうる。教育のモットーは「基礎を深く、視野を広く」であり、創造性に富み適応能力の高いチャレンジ精神を持った学生の育成に努めている。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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