江崎浩 教授|電子情報工学科 学科データを見る

江崎教授のCHANGE THE WORLD|情報ネットワークで『攻殻機動隊』の世界を実現する

Profile
電子情報工学専攻
電子情報工学科 工学博士
1963年、福岡県生まれ。九州大学工学部電子工学科修了。東芝勤務を経て、’98年10月より東京大学へ。2005年5月より現職。次世代インターネットの規格策定からネットワークの実践応用まで、研究・活動範囲は多岐にわたる。「でも、コンピュータ関係は大学を出て会社に入ってから。しっかりとした基礎があれば、卒業後になんでもできますよ」

『攻殻機動隊』の世界実現までの3STEP

  1. STEP1|情報ネットワーク新技術をビジネスで実践
  2. STEP2|自由で優秀なアイデアが集まり、社会が動く
  3. STEP3|人の五感が広がったような感覚の世界へ

インターネットのオープン思想を社会に広める

研究室にはCO2排出量センサーが。

東大工学部2号館は建物全体が一つの巨大な実験場だ。「東大グリーンICT」と冠されたこのプロジェクトには、商社、ゼネコン、家電、ITなど50もの企業や団体が参加してコンソーシアムを結成、情報通信技術を活用した省エネに取り組んでいる。今夏は使用電力量の平均31%削減を達成、大きな成果も挙げた。だがプロジェクト発起人代表の江崎浩教授は、きっぱりと言う。

「僕は、省エネがやりたいわけではないんですよ、ホントはね―」
今から20年ほど前、電子工学を修了後、一般企業に入社した江崎青年は留学先の米国で文字通りのChange the World≠体感した。
「ロバート・カーンとか、ヴィントン・サーフとか、インターネットの父と呼ばれる人たちが統率するナショナル情報スーパーハイウェイ構想のプロジェクトにいたんです。衝撃的でしたね」

全米を光ファイバーを用いた高速通信回線で結ぼうとするこの構想は、その後インターネットの爆発的な拡大へとつながっていく。江崎青年は18世紀の産業革命以来の変革と言われるIT革命の最先端にいたのだ。
「お金持ちの研究所が持っていた高性能コンピュータを使いたいという研究者の願望から始まったインターネットは、実際にみんなが使ってみると、WEBなど新しいアプリケーションを投入する人も出てきて、どんどんコミュニティが大きくなり高機能化していった。インターネットは、オープンなシステムにすることで新しいものをどんどん取り入れて、それまでの古いコンピュータ業界のビジネス構造を変えたんです。僕らは同じことを、省エネをやりながら建築業界でやろうとしています」

研究で使うセンサーなどは学生自ら製作。
写真下は広島市立工業高校からの贈り物。

これまでの建築業界は、デベロッパー(不動産会社のような施設開発事業者)におもしろいアイデアがあってもベンダー(機器・システム提供納品会社)の都合でコントロールされるため、大規模再開発でもビルごとに独自の技術で成り立っていた。これでは新しいものは生まれにくい。江崎教授はいろんな新技術を自由に乗り入れさせ、それをデジタルネットワークでつなげれば可能性が広がると考えた。それが工学部2号館なのだ。

感覚がつながり自由がひろがる世界へ

「楽しいことができる空間をつくったら、結果的に省エネになっちゃいました、というのが目指しているところです。2号館は、すべての情報がネットワークでつながって自由に見ることができたりコントロールできる空間になる。電気をつけるのも、エアコンの操作も、一つの端末でできる。今までの建物では、それぞれが独立してつくられていたため、できなかったんですよ」

そして、そんなネットワークを社会全体に広げることによって生まれてくる新しい世界のイメージを江崎教授は「五感が広がった世界」と表現する。
「目と耳、手、口、鼻が広がった世界。すべての情報がつながり、みんなが自由にそれを使って、豊かで創造性にあふれる生活をする。それは効率的でもある社会になるでしょう。極端に言えば『攻殻機動隊』の世界です。ロボットの目が自分の目と同じになる。ネットワークでつながればそれが可能です」

世界を変えるためには運用することが必要

 システムとしてのインターネットの有効性は東日本大震災でも明らかになった。電話会社が提供する通信ネットワークが完全にダウンするなか、インターネットだけはさまざまな通信メディアを経由して情報を伝えていたのだ。
「しかも、どこかの会社から提供されるサービスじゃなく、ユーザー自身が相互につながることによってグローバルなネットワークになってつねに動いている。だからつながったんです」

一つの会社(権威)が提供する大げさなサービスよりも、みんなが持っている小さなものをつないだほうが、おもしろくて有効なものができる。江崎教授が、「東大グリーンICT」とともにそれを実証しているのが「Live E!」だ。すでに世界8ヵ所で運用されている。東京では、インターネット接続された気象センサーを都内30ヵ所に設置して情報を共有。気象庁よりもリアルタイムな情報を把握できるという。
インターネットの構造を社会に応用する試みは、今後さらに広がることになるだろう。ただし、そのときに最も大切なのは「実際に動かし、使わせて、見せる」ことだと江崎教授は言う。

「それが、世の中を変えるときに必要なんです。研究だけじゃなく、そのモデルがうまくいくのを見せてあげないと絶対に信用されない。2号館にしても、それぞれの技術をオープンにするっていうのは、特に大手の企業は絶対にやりたくなかったと思う。でも2号館で動かすことによって、楽しいことができるようになっちゃった。だったらオープンにすることを前提にビジネスを考えたほうがよさそうだなってなるはず。それこそが、インターネットがこれまでにやってきたことなんですよ」


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江崎教授の研究 Keyword 4|右手に研究、左手に運用。両者のバランスこそが工学だ

  1. Keyword 1|象を使って情報を集め、災害対策を実践する
    タイでの「Live E!」プロジェクトは、プーケットにいる象に取り付けたセンサーネットワークからの情報を首都バンコクに送って利用する仕組み。これは同地を襲った津波の際、唯一使えた移動手段が象だったという経験によるものだ。
  2. Keyword 2|インドでも展開される気象観測ネットワーク
    「Live E!」プロジェクトで開発した自動気象観測装置は、簡易型で安価なのが特徴。インド工科大学との日印共同プロジェクトにも携わる江崎研究室では、この自動気象観測装置を試験的に設置。基礎情報収集活動を行っている。
  3. Keyword 3|タブレットで2号館の省エネを「見える化」する
    江崎教授のiPadには、2号館全体のエネルギー消費を示す画面が表示される。これらの端末でどこからでも自由に、空調や照明などのON/OFFなどをチェック、コントロールできれば、省エネだけでなくさまざまな試みも期待できる。
  4. Keyword 4|LED電球の使用などで、「我慢しない節電」
    2030年までに電力消費量半減を掲げる「東大グリーンICT」プロジェクト。ただし江崎教授は「我慢しない節電」を目指す。2号館は、LED電球の積極採用やコンピュータ関連の効率化などで、この夏、エアコン温度26℃のままでの節電を実証。

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研究学生インタビュー

江崎研究室|石橋 尚武さん|東京大学大学院 情報理工学系研究科 電子情報工学専攻 修士課程1年

研究の様子

実際に使えるものを、研究の成果として出せるのが魅力

トポロジー解析の手法で、インターネットがどんなつながりをしているかという研究を行っている石橋さんは、文系からの転籍で工学部を選び、江崎研究室にやってきた。
大学に入ってみたら、経済学部の勉強があんまりおもしろくなかった。そんなときにWEBに出会って興味を持って、何かしらパソコンを使えるような研究ができればと思って、この学科に進んだ。

この研究室を選んだ理由は?
最初に興味を持ったのは、WEBだったんですけど、そのうちインターネット自体のインフラに興味が移って。それをやるんだったら江崎研究室だと思いました。
現在の研究は?
インターネットが、どのようにネットワーク同士がつながってできているか、全貌を知っている人は実はいないんです。データなどから類推して調べる。ネットワーク同士のつながりは契約上の問題で秘密が多いんですが、大学なら研究目的でデータも出てきます。まずこのつながりを明らかにして、そこからより効率的なインターネット配信を提案できればと思っています。
この研究室は「運用」を大切にするとか。
研究ばかりではなく、江崎研究室はインターネット自体の運用も行っています。例えばこの2号館の無線LANを提供していたり。そういった実際に使えるような技術も取得できる。それにこの研究室はいろんなプロジェクトに属していて、日本のインターネットをつくってきた方々とのつながりもあります。そこで実際に運用してきた人たちのシビアな意見なども聞けるので、机上の空論にならず、実際に使えるものを研究の成果として出せるんです。
文系出身のハンデは?
最初は数学に苦労しました。他のみんなは入試も通ってきて東大の数学でビシバシ鍛えられてるなかで、僕は知識ゼロ。微分積分のむずかしい公式を出されても全然わかんない。この学部に入って、最初の授業はほとんど何もわからなかったです。でもそこからがんばりました。好きだったら、何とかなると思います。今は自分が目指すテーマも見つかって、おもしろいです。

電子情報工学科|「計算知能×コミュニケーション×メディアデザイン」人間を知り、コンピュータを考え、両者の架け橋をデザインする。

今日の社会では、信頼性・安全性が高く、すべての人が安心して恩恵を享受できる情報通信システムを実現することが、非常に重要な課題となっている。電子情報工学科は、その実現のために、情報処理、通信・メディア、電気、電子など現代情報化社会の中枢を担う科学や技術を中心に学び、最先端の応用へと展開する力を養うことを目指す。コンピュータアーキテクチャ、通信・ネットワーク、システムソフトウェア、知的情報処理、デジタルメディアなど幅広い分野の専門家が教員にそろい、世界最高レベルの教育と研究を行っている。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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