染谷隆夫 教授|電気電子工学科 学科データを見る

染谷教授のCHANGE THE WORLD|曲がる集積回路でロボットスキンを実現する

Profile
電気系工学専攻 電気電子工学科
工学博士(専門は電子工学)
1968年宮城県生まれ、東京都育ち。少年時代はラジオを手づくりし、部品探しに秋葉原に通うこともあった。’97年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了。無機化合物半導体の微細加工の研究に携わる。2001年より米国コロンビア大学化学科・ナノセンターに留学。有機電子工学の可能性に着目し、帰国後研究を本格化させる。’09年より現職。

ロボットスキン実現までの3STEP

  1. STEP1|曲がる集積回路をつくる
  2. STEP2|曲がる集積回路にセンサー技術を取り入れる
  3. STEP3|印刷で“ロボットスキン”をつくる技術を確立する

人間にとって機械を使いやすくするためには?

企業との共同研究も進んでいる。

「これまでの電子工学は、シリコンやガラスのような硬い板の上に、トランジスタを並べて集積回路をつくっていました。そのため曲げられないし、落としたら割れてしまうわけです」

染谷隆夫教授は、かつてトランジスタを含む電子デバイスを、小型化する研究に携わっていた。トランジスタが小さくなれば、演算スピードが向上し、消費電力も下がる。同じ面積にたくさんのトランジスタを設置できるので、結果的に価格が安くなると、いいことずくめだった。しかし、10年ほど前に数ナノメートルという、ごく小さなトランジスタが試作され、小型化に飽和感が生まれた。同時に電子工学の将来にも、不安感が生まれてきたという。

「そこで、新たな視点からの研究が必要ではないかと考えたんです。人間にとって、もっと機械を使いやすくするためにはどうすればいいか? そんな視点から、これまでにない研究ができないかと思ったのです」
いくら機械のスピードが速くなっても、人間の能力自体は昔から変わっていない。人間にとって、本当に使いやすい機械を開発することはできないか?

作った回路に電圧をかけ
モニターで電流をチェックする。

独創的な発想で電子工学の最前線を行く

「そこで着目したのは、プラスチックフィルムなど、柔らかな有機素材を使って、シリコンやガラスでは実現できなかった、『大きく、柔らかく、曲がる回路』をつくることでした」

それは従来の電子工学の発想とは、真逆のアイデアだった。染谷教授はプラスチックフィルムに回路を印刷する技術を開発。今までに例がない、独創的なアイデアを実現させることに成功した。現在、企業ではその「曲がる回路」を使って、折り曲げられる薄型液晶ディスプレイや、紙のように丸められる電子ペーパーの実用化に取り組んでいる。数年後には店頭に並ぶというところまで、研究は進んでいるという。
「現在、私たちの研究室では、その回路をもっといろいろなことに応用できないかと考えています。そのひとつのアイデアがロボットスキン≠ナす」

産業界も注目するロボットスキン

「ロボットスキン≠ニは、圧力や温度を感じるセンサーフィルム全般のこと。たとえば、ヒューマノイドロボットの手の表面に貼り付けることで、人間のような皮膚感覚、つまり握手したときの感触や力強さ、温かみなどを再現することができるのです。これまでの電子工学では、人間の五感に代わるセンサーとして、耳の代わりのマイクロフォン、目の代わりのCCDカメラがありました。しかし皮膚感覚に代わるものはなかったのです」

ならば、皮膚感覚に代わるセンサーを開発することで、電子工学が大きく発展するのではないか。そう考えて、ロボットスキン≠提案したという。
「研究を進めるなかで、皮膚感覚に近づけるのであれば、伸び縮みする必要があるということにも気づきました。そこで、新たなロボットスキン≠ニして、伸び縮みするゴム状の回路を開発したのです。このように、私たちの研究室では世のなかにない新しい材料をつくり、実用化への橋渡しをするべく、性能を安定させ、その材料の新たな応用法を考えているのです」

いまやロボットスキン≠ヘ、産業界からも注目の的。企業との共同研究も進んでいるという。

機械から人へ、さらなる可能性を模索

「ロボットスキン≠、情報通信端末にも応用したいと考えています。例えば携帯電話の表面にロボットスキン≠貼れば、なでたりすることで入力できるツールになるかもしれません。そうすれば、携帯電話がもっと使いやすくなったり、新しいことができるようになったりするかもしれませんよね」
染谷教授は、ロボットスキン≠フさらなる可能性に夢を抱く。

「今は機械への使い道を考えることが中心ですが、将来的には人間のヘルスケアや医療機器にも活用できるのではないかと思っています。身につけて健康状態をモニターできたり、体のなかに入れて病気の治療や検査に使えたりするものをつくれないかと。例えば今のペースメーカーは外から見ると、ボコッと出ていて明らかに異物が体内に入っているのがわかります。ロボットスキン≠利用した薄くて柔らかいペースメーカーが実現できれば、長時間身につけていても、不快ではなくなるかもしれません。ゆくゆくは医療と電子工学との融合につなげていければいいですね」
染谷教授によりロボットスキン≠ェ実現したのは、8年前(2003年)のこと。まだまだ黎明期であるこの分野では、実現できそうなことの可能性を示すことも、重要なテーマだ。
「ロボットスキン≠ナあんなことも、こんなこともできるという、あなたのアイデアを発信してみませんか?」
電子工学で世界を変える。そんな大きな夢を共有できる若い力を求めている。


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染谷教授の研究 Keyword 4|ロボットスキンの肝となる技術はこれだ!

  1. Keyword 1|ロボットスキンのプロトタイプ
    2003年、薄くて柔らかい、曲がる集積回路を使ったロボットスキン=i電子人工皮膚)の第1号を完成させた。これでヒューマノイドロボットに、人間と同じような触覚や温度感覚など、皮膚感覚を持たせることに成功した。
  2. Keyword 2|伸縮するゴム状の回路の開発にも成功
    電気的特性が悪いゴムシートに電気を流し、集積化するためのプロセスを開発。それにより伸び縮みする集積回路をつくった。この集積回路なら、サッカーボールのような球状のものにも、ぴたりと貼り付けることができる。
  3. Keyword 3|集積回路を印刷する技術を開発
    プラスチックフィルムや紙のような薄い素材の上に、集積回路自体を直接印刷する技術を開発した。この技術によって、これまでに実現できなかった、大面積の集積回路をつくることができるようになった。
  4. Keyword 4|曲がる回路の性能を安定させる
    ロボットスキン≠フ肝となる技術は、柔らかな素材を使った有機エレクトロニクス。電子顕微鏡でトランジスタの測定をするクロームステーションでは駆動電圧を下げるなど、性能の安定化に向けた研究が続けられている。

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研究学生インタビュー

染谷研究室|横田 知之さん|東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 博士課程2年

研究の様子

誰もしていない新しいことに挑戦できる環境が整ってます

電気電子工学と物理工学の両方を学び、今は染谷教授のもとで学ぶ横田さんに電気電子工学の魅力を聞く。

国際数学オリンピックに出場するほどの力を持つ横田さんが、数学以外の道に進んだのはなぜ?
数学科に進もうか迷いました。でも、それは独学できると思ったんです。それより、応用に直結するような研究にかかわりたかったんです。
染谷研究室を選んだ理由は?
材料からつくったり、応用に近いことができたり、回路設計も学べたり、いろいろなことができるんじゃないかと思いました。何か提案をして、その内容がよければ教授が学外の企業や研究所から共同研究者を見つけてきてくれるので、新しいことに挑戦できる環境が整っています。
研究のおもしろさは?
インクジェットの特殊な印刷装置を使って1ミクロンレベルの集積回路をつくるという研究をしています。そのこと自体がチャレンジングなテーマだし、ほかに誰もやっていないテーマなのでやりがいがありますね。印刷装置の結果が湿度や環境によって変わるので、初めは条件出しが大変でした。修士課程の2年間は満足なデータが得られないこともありましたが、自分が設計した回路が予想したとおりに動いてくれたときはうれしかったです。
学生生活で思い出深いことは?
2011年の2月、ドイツのシュトゥットガルトに短期留学させてもらいました。生物系の研究所に行き、そこにしかない新たな材料と、研究で普段使っているインクジェットの印刷装置を組み合わせて何かできないかなと考えたのです。ある程度その材料が使えそうだとわかったので、これから本格的に研究を進めようと思っているところです。
研究室での生活や将来の目標は?
平日は研究がメインです。先生が朝型なので夜遅くまで研究をすることはありませんが、自宅で解析作業をすることもありますね。学食は人が多いので昼は外へ食べに行くんですが、たいてい研究室のみんなといっしょです。仲はいいですね。将来についてはまだ決めていませんが、研究にこだわらず、多方面にかかわれる仕事がしたいと思っています。

電気電子工学科|「環境・エネルギー×ナノ物質×電子・光システム」地球環境からナノテクノロジーまで、社会と人類の未来をデザインする。

世界初の電気系専門学科として1873年に誕生。その歴史と伝統を受け継ぎながら、常に時代を切り開く、新しい概念や先端技術を生み出してきた。いまや人類にとってなくてはならないものである電気工学と、その応用領域技術。それをさらに進化させるために、電磁気学・量子物理学を中心とした物理学を基礎としながら、電気電子工学の物理学的側面と情報学的側面を融合させた、新たな領域の創成を進めている。それと同時に、深い専門性と幅広い視野、オリジナリティと国際性を持つ人材の育成に努めている。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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