石原孟 教授|社会基盤学科 学科データを見る

石原教授のCHANGE THE WORLD|洋上風力発電で持続可能な社会へ!

Profile
社会基盤学専攻 社会基盤学科
工学博士
1962年、北京生まれ。清水建設技術研究所の副主任研究員を経て、2000年より東京大学へ。耐風設計の専門家として、上海ワールドフィナンシャルセンターや南京大橋の設計に携わる。現在、福島県の「再生可能エネルギー導入推進連絡会」専門部会の部会長として活躍。橋と高層ビルの設計経験を、土台とブレード(羽根)に生かし、風力発電機を開発中。

持続可能な社会実現までの3STEP

  1. STEP1|再生可能エネルギー、洋上風力発電のポテンシャルを検証
  2. STEP2|洋上風力発電を運用し、エネルギーのシフトチェンジを実現
  3. STEP3|産業が生まれ、経済が安定。持続可能な社会へ

再生可能エネルギーへシフトせよ

耐風性研究を行う全径間風洞。

東日本大震災による原発事故をきっかけに、日本はもちろん、世界中で関心が高まっているエネルギー問題。再生可能エネルギーの本格的な導入も期待される中で、今まさに注目を集めているのが、 石原孟教授が提唱する浮体式洋上風力発電≠セ。「福島県沖合に世界最大級の浮体式洋上ウィンドファームを建設すれば、福島第一原子力発電所を上回る500万kWの発電が可能になります」

浮体式洋上ウィンドファームの完成に向け、既に国・企業・福島県・地元住民らが動き出している。福島県は、2011年9月に「再生可能エネルギー導入推進連絡会」を発足。会長の石原教授を中心に、浮体式洋上ウィンドファームをはじめ小水力発電や地熱発電についても、導入の検討を始めた。一大プロジェクトの中心人物である石原教授は、その柔らかな物腰と、そして人の心を掴む静かな情熱で、企業や地元住民に科学的根拠を示し、各界の強者たちの意見をもまとめあげている。

それにしても、浮体式洋上ウィンドファームの話を伺ってまず驚くのは、その発電量の多さだ。CO2を排出せず、風を原動力とする風力発電は、まさに再生可能≠ネエネルギーとして日本でも注目されてきたが、しばしばそのコストと、コストに見合わないわずかな電力供給量が問題となるからだ。これに対し、石原教授は「陸上ではなく洋上にウィンドファームをつくれば、発電量の問題は解決します」と、断言する。

研究室には風力発電機の模型も。

風力発電普及の鍵は海の上にあり!

まず第一に、日本の洋上は陸上とは比較にならないほど風速が速く、風力エネルギーの潜在力が高いという。「日本沿岸で離岸距離30qまでの洋上風力賦ふぞん存量(理論的に算出しうる潜在的なエネルギー量)を、過去の気象データを元にコンピュータ・シミュレーションで算出したところ、陸上の5倍以上となる約16億kWという数値が導きだされました。水深が深くなるほど賦存量も高くなるので、浮体式洋上風力発電が実用化され、水深200mの海域まで風を利用できるようになれば、100万kWの原子力発電18基分のエネルギーを生み出せる。福島県いわき沖では実測も行い、冒頭にお話したように500万kWの風力エネルギーが生み出せることも実証しました」

そして第二に、広い海を使えば、ブレード(羽根)の大型化や発電所の規模の拡大も容易になるという。「風力発電は、ブレードが大型化すればするほど発電量が増えます。現在最も大きいブレードで直径約160m。陸上で運ぶのは至難の業で、日本ではまず道路を曲がれません。洋上ならば、こうした運搬問題も解決できる上に、日本では深刻な用地の確保も容易です。陸上で、大都市に近く騒音も問題にならない広い用地は、そうそうない。でも洋上ならば、電力消費地に近い位置に大規模なウィンドファームを設置できます」

大都市の近くで発電が可能になれば、送電コストも抑えられる。離岸距離10q以上の海域に設置すれば、陸上からは見えないので景観も守られ、騒音も聞こえなくなる。陸上の風力発電のさまざま課題が、洋上に場所を移せば次々と解決してしまうのだ。

エネルギーも狩猟型から農耕型へ

とはいえ、課題はもちろんある。洋上に設置することで漁業への影響が心配されること、そして建設コストが高いこと。石原教授が着床式≠ナはなく浮体式≠推奨する理由も、実はここにある。「洋上風力発電には、海底に基盤を築いて風車を固定する着床式≠ニ、風車を浮かせて鎖でつないだ錘を海底に沈めて固定する浮体式≠フ2種類があります。着床式は水深が深くなるほどコストがかさみますが、浮体式のコストは水深に関係しないので、漁業に影響のない海域まで出ての操業も現実的です」

建設費や維持費、人件費などのコストは、今もって大きな課題の一つと認めた上で、石原教授は言う。「課題はどんな技術にもありますが、一番大切なのは哲学です。僕の哲学は、持続可能な社会をつくり出すこと=Bいわき沖に世界最大級の浮体式洋上ウィンドファームが完成すれば、メンテナンスや運用に一定の雇用が生まれます。風力発電機の寿命は約20年。最新技術を取り入れ効率良く発電するのに丁度良い周期で発電所の建て替えが行われ、新たな雇用が生まれます。産業が根付けば経済が成り立ち、そこで多くの人々が暮らすことができる。真の復興のためには、このような持続可能な社会≠つくることが大切です。目指すのは、繰り返し耕す農地のような農耕型のエネルギー。石油は狩猟型。あそこにあるぞ!≠ニ取りにいき、なくなったら別の場所を探す。石油が少なくなり燃料が高騰すると産業にブレーキがかかり、経済が失速……。これが今の社会です。洋上風力発電こそ、環境・経済・エネルギーの問題を同時に解決し、これからの世界経済、そして人類の繁栄を支えるエネルギーだと信じています」


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石原教授の研究 Keyword 4|界の風を読み、エネルギーシフトへの旋風を巻き起こす!

  1. Keyword 1|地球規模で風を読む水商売ならぬ風商売!
    今石原教授の専門は風工学。橋梁やビル、ウィンドファームなどを建設するために風の調査をしている。図は関東近海の洋上発電量をマップ化したもの。銚子沖の風は非常に強いことを発見した。日本だけでなく世界の風事情にも精通している。
  2. Keyword 2|洋上風力発電研究へのきっかけとなった光景
    石原教授が「これからは洋上風力だ」と思ったきっかけは、2000年にコペンハーゲンで行われたヨーロッパ国際風力会議。20基が円弧状に並んだ、美しいウィンドファーム(写真)が目の前に広がっていた。
  3. Keyword 3|福島の復興のためにエネルギーを考える!
    福島県の「再生可能エネルギー導入推進連絡会」専門部会の部会長として提言を行っている石原教授。県、電力会社、企業、銀行など各界のトップが集まり、新しいエネルギーシステム、エネルギー産業のかたちを模索中。
  4. Keyword 4|動物柄のネクタイは出張のお楽しみ
    10年ほど前、海外出張した際に、手違いで荷物が届かず急きょ買い求めたのがきっかけで集め始めた、アニマル柄のネクタイ。海外出張のちょっとした楽しみになっているそう。現在のコレクションは7〜8本とのこと。

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研究学生インタビュー

石原研究室|菊地 由佳さん|東京大学 大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 修士課程2年

研究の様子

国内外の建設現場へ。現場に立って初めて見えてくるもの

再生可能エネルギーの導入に向け、洋上風力発電のコスト評価手法の確立を目指す菊地さん。
社会基盤学科の授業は、学部生時代からどれもとてもおもしろかったという。

印象に残っている授業をひとつあげると?
最初の授業で、大正時代の設計図を見ながら、日本橋にある永代橋の10分の1のサイズの模型をつくるのが、学科の伝統なんです。50人全員で協力しながら模型を組み立てるのが、純粋に楽しかったですね。ものをつくったり建設現場に赴いたりと、頭だけでなく手足をフルに使う学科なので、行動的な人が多い気がします。
今までどんな現場に見学に?
学部生時代は、橋梁や道路、堤防など、広く社会基盤について学ぶので、空港新滑走路建設・地下鉄工事・トンネル建設・製鉄所など、さまざまな現場を見学しました。2010年は、研究室旅行で浜松風力発電所へ。建設を担当された方に建設中につまずいたところなどを直接伺えただけでなく、陸上の風力発電の課題となる騒音を、自分の耳で確かめることもできました。
被災地にも行かれたとか?
東日本大震災後の5月に、2泊3日で宮古市や陸前高田市などをまわり、橋梁を中心に被害状況の調査を行いました。研究室の修士課程1年生が中心になって、手配してくれたんです。交通・海岸(堤防など)・防災など、社会基盤学科で扱うテーマは直接震災に関わるものばかりなので、どこの研究室もすばやく現地調査に動いていました。被害の大きさを目の当たりにして言葉もでませんでしたが、今後の災害対策に向け、とにかく黙々と現場を調査しました。
その他、社会基盤学科の魅力は?
海外に行く機会が多いことでしょうか。院生は少なくとも年に2〜4回は、学会やサマースクールなどで海外に行きます。留学プログラムは、学部時代からとても充実していて、サマースクールの種類も豊富ですし、フランスに1〜2年間留学して修士課程をとることも可能です。専攻の半数近くが留学生で、将来その国を背負って活躍される方もいっぱい。世界に通用する力を身に付けられる環境が整っています。

社会基盤学科|人間の生活や自然、社会に関わる様々な専門領域を包括する社会基盤学。次代の文明・環境創造を担う多彩で個性豊かな人材の育成を目指す。

道路や公園、橋、駅や鉄道、物流や情報通信施設、電気や水道など私たちの生活基盤づくり、自然環境づくりを支える、さまざまな社会基盤技術。その基礎技術を学び、デザイン・政策決定・マネジメントに関する研究や開発を行うのが、社会基盤学科だ。学生たちは、地方都市の再生、自然環境の保全、環境・エネルギー問題の解決など、現代の多くの課題と向き合い、日々研究に励んでいる。今改めて注目される防災対策なども、重要な研究テーマとなっている。

3年生の時間割例[夏学期]

修士課程終了後の進路


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