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野地博行教授が第30回井上学術賞を受賞されました

 

応用化学専攻 野地博行教授が、第30回(2013年度)井上学術賞を受賞されました。

 

<受賞された賞について>
公益財団法人井上科学振興財団では、財団設立の1984年度から井上学術賞及び井上研究奨励賞の贈呈事業を、2009年度から井上リサーチアウォードを実施している。
その中で井上学術賞は、自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績を挙げた50歳未満の研究者に対し、第30回井上学術賞(賞状及び金メダル、副賞200万円)が贈呈された。
関係36学会及び本財団の元選考委員、井上学術賞既受賞者など132人に候補者の推薦を依頼、25件の推薦を受け、選考委員会における選考を経て5件が採択された。

 

<受賞された研究について>
細胞の中でエネルギーを産生する発電所とでも言えるATP 合成酵素が、反応とともに物理的に回転する「分子モーター」であることを明らかにした事、そして同じ分子が、逆向きに回転させると逆反応を触媒するという、物理運動と化学反応のカップリングを証明したことである。これにより、力学エネルギーと化学エネルギーの変換メカニズムというものが、仮想的なもので無く具体的な実体として認識されるに至り、今では生物学上の常識として定着している。また、これらの研究の過程で、1分子による反応の微量計測法の開発や、そのための超微量試験管(フェムトリットルチャンバー)をマイクロ加工技術の専門家と考案するなど、生物学にとどまらず工学、ナノサイエンス、分析化学の分野に多大なインパクトをもたらしたことも評価された。(以上、井上学術賞 受賞理由書を抜粋)

 

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【図の説明】回転分子モータ−ATP合成酵素の1分子実験の模式図。 力学操作を介した分子との会話を通して、タンパク質でできた分子機械の超高効率エネルギー変換メカニズムを研究してきた。

 

<今後の抱負・感想>
人との巡り合わせに恵まれたからこその受賞だと痛切に感じる。学生時代にお世話になった先生方と、優れた同世代の研究者達との共同研究が今回評価していただいた研究成果に直結している。今も、優秀で素直な学生さんやとびきり優秀で個性的なスタッフ達に囲まれて、この上ない環境である。今後も、好奇心のおもむくままのエゴイスティックな基礎研究と、そこから生まれた成果を社会還元する応用研究を両輪とし、ますます研究に邁進したい。さらには、アカデミアでのびのび活躍する人材も輩出したい。