プレスリリース

ダイヤモンド磁気センサーのさらなる高感度化・小型化に向けて ~ナノ構造を利用した次世代ダイヤモンド量子センサー~


<概要>
豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系 勝見亮太助教、八井崇教授、東京大学大学院工学系研究科 関野正樹教授らの研究チームは、ナノ構造を利用した構造設計により、ダイヤモンド量子センサーの感度がさらに向上できることを示しました。この研究成果は、日本の学会誌「Japanese Journal of Applied Physics (JJAP)」に2022年7月3日に採択されました。

<詳細>
窒素―空孔(NV)センターとは、ダイヤモンド中に形成される点欠陥であり、優れた光学・スピン特性を有しています。そこで、ダイヤモンド中の集団NVセンターを量子センサーとして利用すれば、高感度な磁気検出が室温で可能なことが理論上知られており、次世代高性能磁気センサーとして大変注目されています。ところが、これまでに報告されてきたNVセンターに基づく量子センサーは、超伝導量子干渉計といった既存のセンサーに比べると感度が低いことが問題でした。NVセンターからの発光検出効率を向上することができれば、磁気感度を改善できますが、ダイヤモンドの加工は技術的に難しいこともあり、集団NVセンターの発光取り出し効率向上に向けた設計は行われておりませんでした。
そこで本研究では、高感度な磁気検出が可能なダイヤモンド量子センサーの実現に向けて、図に示すようなNVセンターの発光強度増強とその高効率な発光取り出しを可能にする共振器デバイス構造を提案しました。同構造を利用すると、NVセンターの磁気感度をさらに向上することが可能となり、超伝導量子干渉計といった既存のセンサーと同等の数十fT/Hz1/2の感度が期待されます。さらに、デバイスサイズが数μmと小型なため、必要となる光パワーの大幅な低減も可能となります。
この研究成果は応用物理学会が刊行する英文論文誌「Japanese Journal of Applied Physics (JJAP)」に2022年7月3日に採択されました。
本研究は、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP, JPMXS0118067395)の支援を受けています。また、科研費 (18H01470, 20H02197, 20H05091, 20K21118, 21K20428, 22H01525, 22K14289)の支援も受けています。

<今後の展望>
研究チームは、既存のダイヤモンド加工技術を活用して、本設計デバイスを作製可能であると考えています。最終的には、本研究の設計を他の集積技術や光通信技術と組み合わせ、次世代の実用的な量子センサーになると考えています。

<論文情報>
Ryota Katsumi, Masaki Sekino, and Takashi Yatsui, “Design of an ultra-sensitive and miniaturized diamond NV magnetometer based on a nanocavity structure,” Japanese Journal of Applied Physics, DOI: 10.35848/1347-4065/ac7e10

提案したダイヤモンド量子センサー
デバイス構造(左)、電磁界シミュレーションの計算結果(右)fig1
fig2
プレスリリース本文:PDFファイル

Japanese Journal of Applied Physics (JJAP):https://iopscience.iop.org/article/10.35848/1347-4065/ac7e10