プレスリリース

環状ペプチドのヒト血清アルブミンに対する結合様式を解明~環状ペプチド創薬の加速に期待~:化学生命工学専攻 妹尾暁暢(博士課程)、バイオエンジニアリング専攻 津本浩平 教授、長門石曉 特任准教授ら

 

長岡工業高等専門学校電気電子システム工学科の和久井直樹助教、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻博士課程の妹尾暁暢氏、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻/化学生命工学専攻の津本浩平教授、東京大学医科学研究所/東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の長門石曉特任准教授、東京工業大学情報理工学院情報工学系の大上雅史助教、理化学研究所放射光科学研究センターの山本雅貴グループディレクター、株式会社リガクらの研究グループは、環状ペプチド医薬品であるダルババンシンと血漿タンパク質であるヒト血清アルブミンの複合体結晶構造を解明しました。
低分子医薬品、抗体医薬品につぐ第3の医薬品として環状ペプチド医薬品が近年注目を集めています。しかし、環状ペプチド医薬品は腎排泄などの影響から投与後の体内安定性が低いことが問題として知られています。環状ペプチド医薬品の体内安定性を向上させるためには、血漿タンパク質であるヒト血清アルブミンとの結合が非常に重要になります。しかし、これまでに環状ペプチドとヒト血清アルブミンの複合体構造は報告されておらず、環状ペプチドがどのようにヒト血清アルブミンに結合しているかは未解明でした。
本研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」のビームライン(BL26B2, BL32XU)を用いたX線結晶構造解析、実験室系X線装置を用いたX線小角散乱法(Small-angle X-ray scattering, SAXS)、等温滴定型カロリメーター(Isothermal titration calorimetry, ITC)、分子動力学(Molecular dynamics, MD)シミュレーションを組み合わせることで、ダルババンシンのヒト血清アルブミンに対する結合様式を明らかにしました。今後、複合体結晶構造から明らかになった相互作用に基づく環状ペプチドの設計などが期待されます。
本研究成果は、日本標準時2020年11月13日(金)17時(グリニッジ標準時2020年11月13日(金)8時)公開のJournal of Medicinal Chemistry誌に掲載されました。



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東京工業大学:https://www.titech.ac.jp/news/2020/048142.html