プレスリリース

「トポロジカル絶縁体」と「普通の絶縁体」の中間の新しい絶縁体の発見

 

物質のトポロジーに関する研究は、今世紀以降、世界中で積極的に行われてきたが、2016年にノーベル物理学賞がトポロジカル相の研究に授与されてから、一層活発化している。

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の渡邉講師は、米ハーバード大学のVishwanath教授、マサチューセッツ工科大学のPo研究員との国際共同研究で、近年注目されている「トポロジカル絶縁体」に関する新理論を提案した。これまで、全ての絶縁体は「普通の絶縁体」か「トポロジカル絶縁体」かのどちらかに分類できると考えられてきたが、今回の研究で、新たに両者の中間的な絶縁体(「脆弱なトポロジカル絶縁体 (fragile topological insulator)」)が存在することが理論的に解明された。

 本研究で見つかった絶縁体は、それ自体はトポロジカル絶縁体のように振る舞うが、普通の絶縁体と重ねるだけでトポロジカルな性質を失ってしまうという点が、これまで知られていたどのトポロジカル絶縁体とも異なる。

 物質の実現しうる新しい可能性を見出すことは、近年の物性物理学の大目標の一つである「トポロジカル相の完全な分類」の達成へ向けて、基礎科学を大きく前進させる意義がある。本研究の成果は、物質のトポロジーを利用した新デバイスの発明、スピントロニクス技術の発展、量子コンピューターの開発などに将来的に結びつくことが期待される。

 本研究成果はPhysical Review Letters誌のオンライン版に掲載され、Editor’s suggestionにも選ばれている。

 

 

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Physical Review Letters(Editor’s suggestion): https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.126402