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工学部/工学系研究科 トピックス

若手研究者紹介:龍 吟(ロン イン) 助教

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技術経営戦略学専攻 吉田研究室 龍 (ロン イン 助教

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【経歴】
20154- 20163月 独立行政法人国立環境研究所 社会環境システム研究センター 准特別研究員

20199月 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻 博士課程修了 

201910 - 20204月 東京理科大学 理工学部 助教

20205 - 20216月 東京大学 未来ビジョンセンター 特任助教
2021
7 - 現在 東京大学大学院 工学系研究科技術経営戦略学専攻 助教

 

【研究について】

A)過去5年間の研究で(環境拡張型)産業連関分析(Input-output analysis/Environmental-extended Input-output analysis /EEIO)を基盤にしつつ、市民の消費行動による環境影響評価、また広い範囲を対象とした温室効果ガスの空間分布の特徴・相関性分析、行動変容による削減ポテンシャル予測を行った。目的は、人間活動に由来する地球温暖化を行動変容により緩和することである。その上で、人間活動による干渉(intervention)のゼロエミッション・低炭素社会システムへの影響を評価する研究も行った。環境拡張型産業連関分析により、市民の日常の生活で不可欠な商品サービスについて、生産から消費されるまでのライフサイクルを通して用いられる多大なエネルギーを追跡することができる。そして、全ての消費に由来する環境影響は人類が地球に踏まえた「足跡」とみなすことができる。この「足跡」を追跡することで、市民の日常の生活の環境負荷を定量化することが出来る。例えば、家庭の外出食事などに由来するカーボンフットプリントは収入層別、年齢層別、地域別に分類した分析も可能となり、「消費行動の環境負荷を可視化する」研究として進んでいる(図1は産業連関分析の単一地域から多地域の展開について)。

 

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B)また、従来の計量経済モデルとデータサイエンスの応用モデルを比較融合する研究も行った。例えば、計量統計学の時系列解析と動的時間伸縮法(DTW)で時系列データの類似度を調べる方法を同時に運用し、また、ミクロなCO2排出量データを用い、複数の機械学習手法(ロジスティック回帰、k最近傍法、決定木、ランダムフォレストとアルゴリズムXGBoost)で家庭ライフスタイルのCO2削減ポテンシャルを比較する研究にも携わっており、データサイエンスの環境研究への応用を推し進めている。研究(A)と結びつけて、ビッグデータ時代を背景として機械学習などのデータ分析手法を用いて、共通な消費パターンまたはライフスタイルを持つ人口の特徴を抽出する研究も展開している。特に人口高齢化の時代に、人口属性の再分類によって特定の消費行動にカスタマイズした低炭素行動を普及させる可能性の分析が可能となった。また、需要側の家庭部門を対象にして、マクロのサプライチェーンの内包エネルギー消費データとミクロ消費データを融合してライフスタイルに内包された環境負荷を定量化する研究も行われている。その目的は、将来の少子高齢化の傾向を考慮しながらカーボンニュートラルの目標を実現する家庭部門の貢献を最大化させることにある。

 

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C現在、家庭部門は各産業の商品・サービスの最終需要の中で最大の割合を占めており、今後の低炭素社会形成の各方面と緊密に関与している。そして、ライフスタイルの変化(行動変容)は、エネルギー消費量の変化にも大きく関わっている。そのうち、地域の社会経済や文化とも深く結びついている食事の選択についても、地球環境に大きな影響を及ぼす。先行研究では、家庭の持続可能な食生活に関する研究とそこで置かれた重点が大幅に偏在している。つまり栄養学・環境学・消費者行動学の知見を分離したまま研究が実施される事例が多く、持続可能な食環境に関する政策の「一貫性」を確保すること難しい。一方、WHOによると、貧しい食生活はあらゆる形態の栄養不良の有病率の増加に大きく寄与している。不健康な食事と栄養不良は疫病に関連するリスク因子の上位10項目の中に含まれ、現行の食料生産と消費パターンは環境と自然資源の基盤に大きな被害を与えている。したがって、環境(地球環境の健康)と栄養(個人レベルの健康)の両方の観点から、持続可能かつ栄養バランスの良い食生活の実現が非常に重要である。この研究では、持続可能で健康・栄養を改善する食事を推進するため、社会文化的に受容可能で経済的にも利用しやすい提案を明示することを目的とする。具体的には①レシピビッグデータと産業連関分析に基づいて、従来の環境経済学とデータサイエンスの分析手法を結び付け、個人の食生活由来の環境負荷量を定量化する、②社会属性別に食生活の環境負荷・栄養摂取を分析し、新しい持続可能な(環境面かつ栄養面)の指標(Sustainable Dietary Index)と需要別のレシピ推薦指標を開発する、③前述の研究結果を活用してライフスタイルの変化によるCO2削減量を推計し、2050年の日本社会全体のカーボンニュートラル目標とSDGs 2、3、4、6、7を考慮した人々の食生活に関する行動変容に基づくシナリオを策定し、これからの持続可能な食生活の形成に関して理論と実証の両面から検討する。これらの分析により、栄養面と環境負荷を同時に考え、人口構成を考慮する人口属性別の持続可能な食生活を提案できることが期待される。

 

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【今後の抱負】

これまで展開してきた環境学の研究に、今後は経済学、生態学、栄養学またはデータサイエンスなどの分野と組み合わせることでより家庭部門におけるカーボンニュートラルに向けた目標に貢献していきたいと考えています。

 

URL

Google scholar https://scholar.google.com/citations?user=cUgJODwAAAAJ&hl=en
Researchmap : 
https://researchmap.jp/long