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2018.11.16

【若手研究者紹介:012】精密工学専攻 淺間研究室 安 琪助教

経歴
2008年03月 東京大学工学部システム創成学科知能社会システムコース卒業
2010年05月-2011年05月 ワシントン大学留学
2011年09月 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻 修士課程修了
2014年09月 東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻 博士課程修了 博士(工学)
2012年04月-2015年03月 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2014年11月-2015年03月 ミュンヘン工科大学 客員研究員
2015年04月-2017年03月 東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻 特任助教
2015年10月-現在 理化学研究所 客員研究員
2017年04月 東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻 助教

<研究について>
 現在我が国を始め多くの国で高齢化が進んでいます。加齢に伴い人の身体機能は衰え、また脳卒中などにかかる割合も増え、運動障がいを抱える人が増え、生活の質が低下してしまいます。私達の研究室はこのような問題に対して、基礎研究として、人が運動を達成するメカニズムやリハビリテーションによる運動機能の回復過程を理解する研究に取り組み、応用研究として支援技術の開発を行っています。
 特に私達の研究では、人が運動をするときには個別に筋を制御しているのではなく、複数筋群の協同発揮(筋シナジー)を制御して運動しているという仮説に基づいて研究を進めてきました。そして基礎研究では、人の運動を計測し、運動に共通する要素を抽出する解析的アプローチと、運動の要素(筋活動)から実際の運動を再構成する構成論的アプローチを用いて運動メカニズムの解明に取り組んでいます。
 解析的アプローチでは、具体的には人が実際に様々な運動を行っている時の身体軌道や床にかかる力、筋活動を計測し、筋シナジーの抽出を行いました。その結果として、人が異なる高さの椅子から立ち上がるときや運動の速さが違っていても、筋シナジーの活動度の振幅や活動時間を巧みに変化させて立ち上がっていることが分かりました。一方で構成論的アプローチでは、実際に筋シナジーから運動を再構築できるかシミュレーションによって調べます。通常の人を対象とした実験では、立ち上がれずに転んだりする動作を計測することは難しいですが、シミュレーションではそのような動きを実現することも可能なため、様々な筋シナジーの活動条件を試すことで、人が転ばずに立つための条件を導出することが出来ました。
 最近の研究では、森之宮病院と共同研究を行っており、筋シナジーの理論を脳卒中後に片麻痺になった患者の運動に適用し、片麻痺者では筋シナジーがどのように変化し、またリハビリテーションの過程でどのように変化するのかを調べています。さらにリハビリテーションの支援をする理学療法士の腕の動きを計測することで、各患者に対してどのように支援をしているのか評価しています。その結果からは片麻痺になると筋シナジーの活動タイミングを上手に調整できなくなりますが、適切なリハビリテーションを経て、活動タイミングの改善が見られることが分かりました。現在さらにこの知見をもとにした支援技術の研究開発を行っております。

 <今後の抱負>
 私達の研究室では、高齢者の健康寿命を延伸し、活力ある社会を実現することを目指しています。基礎研究では高価な計測機器やセットアップに時間がかかる装置も活用することで、人の運動機能を詳細に評価・解析することが可能になっています。今後はより多くの患者がリハビリテーションにおいて運動機能を回復するために必要な介入はなにか、高齢者の身体機能低下を防ぐための方策を調べていくことで、効果的な支援を実現したいと考えています。またさらに病院や在宅においても気軽に運動機能を評価し、支援できるような機器の研究開発を進めていきたいと考えています。

参考URL:http://www.robot.t.u-tokyo.ac.jp/~an/