プレスリリース

2014.02.21

ディラック状態を固体と固体との「界面」でも検出 -トポロジカル絶縁体を用いた低消費電力素子への応用に期待-: 量子相エレクトロニクス研究センター 川﨑 雅司教授

 

理化学研究所(理研、野依良治理事長)と東京大学(濱田純一総長)は、近年見いだされた新物質のトポロジカル絶縁体「(Bi1-xSbx)2Te3薄膜」とインジウムリン(InP)半導体を接合した素子を用い、トポロジカル絶縁体に特徴的な「ディラック状態」を固体と固体との「界面」で検出することに初めて成功しました。これは、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程大学院生の吉見龍太郎(強相関物性研究グループ研修生)、菊竹航(強相関理論研究グループ研修生)と、東京大学大学院工学系研究科の塚﨑敦特任講師(現 東北大学金属材料研究所教授・理研客員研究員)、ジョセフチェケルスキー特任講師(現 マサチューセッツ工科大学准教授・理研客員研究員)、および理研創発物性科学研究センター(十倉好紀センター長)強相関界面研究グループの高橋圭上級研究員、川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)との共同研究グループによる成果です。
トポロジカル絶縁体は、内部は電流を流さない絶縁状態であるのに対し、その表面は特殊な金属状態が現れる物質です。表面の金属状態は、グラフェンなどでも知られるディラック状態で、エネルギーをほとんど消費しない電子伝導が可能なため、低消費電力素子への応用に向け研究が活発化しています。しかし、トポロジカル絶縁体のディラック電子は、これまで真空と固体との境界である「表面」で実験的に検出されたことはありましたが、固体と固体との「界面」で検出された報告はありませんでした。
共同研究グループは、トポロジカル絶縁体の1つである(Bi1-xSbx)2Te3薄膜を、半導体材料のInP基板上に単結晶成長させ、界面を通したトンネル伝導測定を行いました。磁場中でのトンネル電流を詳細に解析した結果、界面にもディラック状態が存在することを明らかにしました。さらに、トポロジカル絶縁体の試料組成比を制御することで、界面のディラック状態を自在に制御できることを示しました。
今回、実際に固体素子へ適用するうえで必要となる固体と固体との「界面」でもディラック状態が保持されていることを実証しました。これは、既存の半導体技術とトポロジカル絶縁体のディラック状態を融合した新しい素子開発の可能性を示した結果であり、低消費電力素子の実現へ大きく前進したことになります。
本研究は、最先端研究開発支援プログラム(FIRST)課題名「強相関量子科学」(中心研究者:十倉好紀)の事業の一環として行われ、成果は、英国の科学雑誌『Nature Materials』(3月号)のオンラインに掲載されました。

 

 

Eng_yoshimi0217.jpg

詳しくはこちらをご覧ください。