プレスリリース

2015.02.04

新しい遺伝子治療 -メッセンジャーRNA(mRNA)投与による神経障害の治療- :マテリアル工学専攻 片岡一則教授

神経麻痺やアルツハイマー病などの神経障害は、根治的治療が困難な難治疾患の代表例です。遺伝子治療は障害された神経細胞を元から治すことができる重要な戦略ですが、これまでの天然のウィルス(ウィルスベクター)や、天然の遺伝子(DNA)の形で投与する手法は、標的細胞自身の遺伝子(ゲノム)を傷つけてしまう懸念があり、治療への応用は困難でした。

メッセンジャーRNA(mRNA)は、通常細胞の中で遺伝子(DNA)からの転写によって産生されるものですが、このmRNAを人工的に合成し、細胞に外部から適切に送達することによって、安全かつ効率よい遺伝子治療を行うことができます。しかし、mRNAは極めて不安定で生体内では急速に分解されてしまうこと、また自然免疫機構を刺激して生体内で強い炎症反応を引き起こすことから、生体内の細胞に直接mRNAを送達することは容易ではなく、これまでmRNAの治療への応用はほとんどありませんでした。

今回、東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの位髙啓史特任准教授・片岡一則教授らの研究グループは、高分子ミセル型ドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いたmRNA送達システム(ナノマシン)を構築し、mRNAを用いた遺伝子治療により、嗅覚神経障害を生じた動物の神経組織再生、機能回復が得られました。神経障害に対する、mRNAを用いた遺伝子治療の世界で初めての成功例です。

本研究の成果により、新しい遺伝子治療用医薬としてのmRNAの可能性が実証され、多くの神経疾患治療への応用が期待されます。

201502_kataoka1.jpgのサムネール画像  


論文アブストラクトは こちら から。

 

※本件に関する問合せ先

【研究内容に関する事項】
東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門
特任准教授  位髙 啓史
東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻/大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門
教授  片岡 一則
【その他に関する事項】
公益財団法人 川崎市産業振興財団COINS支援事務局
松枝 温子