プレスリリース

柔らかいシート上へ実用スピントロニクス素子を直接形成することに成功 ~スピントロニクス素子のIoT応用展開を大きく拡大~:物理工学専攻 太田進也(D3)、千葉大地准教授(研究当時)ら

 

磁気トンネル接合と呼ばれる、2枚の磁性薄膜で絶縁体のナノ薄膜をサンドイッチした構造は、ハードディスクの高感度な磁気読み取りヘッドや不揮発性磁気メモリの記録素子として広く活躍しており、代表的なスピントロニクス素子と言えます。中でも、CoFeBを磁性層に、MgOを絶縁層に用いた接合素子は、市販のデバイスにおいてすでに広く用いられています。しかし、これらの接合素子は硬い半導体素子上に形成され、外部から応力が加わった状況下で使用することは想定していませんでした。
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の太田進也氏、同 小野真暉氏(工学部物理工学科)、同 千葉大地 准教授、株式会社村田製作所の安藤陽氏、大阪大学産業科学研究所の関谷毅 教授らの研究チームは、世の中で広く用いられているCoFeB/MgO系の磁気トンネル接合素子を、柔らかい有機シート上へ直接形成することに世界で初めて成功しました。高い伸縮性と熱耐性を有する同素子は、スピントロニクス素子のメカニカルデザインの自由度を拡大し、フレキシブルデバイス周辺への磁気メモリの配備や、柔らかい磁気センサやひずみゲージの高感度化など、新たな産業応用展開へ直結するものと期待されます。
本成果は、2019年4月10日に、「アプライド・フィジックス・エクスプレス(Applied Physics Express)」のオンライン版に掲載されました。なお、本研究は株式会社村田製作所の協力を受けて実施されました。

 

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Applied Physics Express:https://iopscience.iop.org/article/10.7567/1882-0786/ab0dca

APEX誌のSpotlightsに選出されました。
http://iopscience.iop.org/1882-0786/page/Spotlights