プレスリリース

濃厚電解液の総合力と将来性 -ネイチャーエナジー誌招待による総説を発表- : 化学システム工学専攻 山田裕貴講師、山田淳夫教授ら

 

再生可能エネルギーの有効利用、車両電動化という世界的潮流に照らし、リチウムイオン電池を中心とする蓄電技術の重要性に対する認識が日々高まっている。電解質塩を通常よりも多量に(概ね2-5倍程度)溶解した濃厚電解液には、これまでに知られていない多くの超機能・新機能が秘められていることが、ここ数年の東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授らを中心とする研究グループにより明らかになった。極めてシンプルな施策でありながら、現状のリチウムイオン電池が抱える問題点をほぼすべて解決可能な総合力を有することから、有望技術として昨今急速に脚光を浴びている。関連する研究論文発表が世界的規模で急増している背景を受けて、英国ネイチャーエナジー誌が濃厚電解液技術に関するレビューの掲載を企画し、その依頼を受けて本論文が執筆された。
 蓄電池技術についてはその高まる重要性から、研究開発の枠を超え、国家戦略、企業戦略から関連する政策、株式、広報に至るまで、さまざまな立場・視点・意図・思惑を背後に多くの情報発信がなされている。本招待論文は純粋に学術的観点からまとめられており、濃厚電解液の蓄電池技術における位置付け、利点・欠点、将来性などを、恣意性を排して客観的に理解するための指標となることを意図して執筆されている。また、既に認知が進んでいる多くの技術的利点を強調することは最小限に留め、絞られつつある問題点とその解決にむけての具体的方向性の記述に重点がおかれている。

 本総説は、2019年3月11日付の英国学術雑誌Nature Energy電子版に掲載される。
基盤となった研究成果の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金特別推進研究(No. 15H05701)、及び、文部科学省元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>「京都大学 触媒・電池元素戦略研究拠点ユニット」(研究代表者:田中庸裕 京都大学大学院工学研究科教授)による支援を受けて行われた。

プレスリリース本文:PDFファイル

Nature Energy : https://www.nature.com/articles/s41560-019-0336-z