プレスリリース

電子の液体状態と固体状態の競合を観測-トポロジカル量子計算を阻害する要因を発見-

 

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター強相関界面研究グループのデニス・マリエンコ研究員、川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、ラドバウド大学強磁場研究所のアリックス・マッコラム助教授らの国際共同研究グループは、代表的な酸化物半導体である酸化亜鉛中の電子が強い磁場中で、液体状態と固体状態の混じった特殊な性質を示すことを見いだしました。
本研究成果は、電子間の電気的な反発力(電子相関)の強い状態の変化を純粋な物理系で調べる手掛かりとなるとともに、トポロジカル量子計算実現への道筋を切り拓くと期待できます。
水のような物質に気体・液体・固体の状態があるように、物質中の電子にも気体・液体・固体に相当する状態が存在します。このような電子状態の変化は、欠陥や不純物が極めて少ない半導体の二次元電子について、温度・外部磁場・電子密度を変化させながら電気抵抗を測定することで調べることができます。また、強い磁場中では、電子と2本の磁束量子が結合した「複合粒子」が形成されますが、この複合粒子と電子の状態変化との関係は不明でした。
今回、国際共同研究グループは、欠陥や不純物の少ない酸化亜鉛薄膜中の電子に強磁場を加えると、二次元電子が互いに反発し合い、液体状態から固体状態へ遷移していく様子を観測しました。その遷移過程では、「固体状態の電子と液体状態の複合粒子の混合状態」が存在することが明らかになりました。これは、酸化亜鉛中の電子の有効質量が通常の半導体よりも5倍程度大きいために、電子相関が特に強くなった結果、発現したものと考えられます。
本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(10月19日付け:日本時間10月20日)に掲載されました。

 

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Nature Communications:https://www.nature.com/articles/s41467-018-06834-6

理化学研究所:http://www.riken.jp/pr/press/2018/20181101_1/