プレスリリース

磁石に直接電流を流すだけで単一磁区を作り出すことに成功 ~磁気デバイスの動作原理を一新する可能性~

 

東京大学大学院工学系研究科の小山知弘助教、同研究科の千葉大地准教授らの研究チームは、室温で磁化を持たない多磁区状態にあるコバルト(Co)と白金(Pt)を接合させた試料(以下Co/Pt系)において、試料に直接電流を流すだけで磁化を生じさせることに成功しました。電流量を制御することで、試料全体の磁化が同一方向に揃った単一磁区状態を実現できることも示しました。

近年、磁界ではなく電流を用いた磁気メモリの書き込み手法に関する研究が盛んに行われています。特に最近では、Co/Pt系に代表される薄膜磁石/重金属接合系に電流を流すことで生じるスピン軌道トルクが、新たな書き込み技術として注目を集めています。本研究で示された電流による磁化誘起現象も、このスピン軌道トルクにより引き起こされていることが明らかにされました。これまでスピン軌道トルクは磁化の向きを反転させる手法としての側面が注目されてきましたが、本研究結果は、多磁区⇔単磁区という磁石の「状態」を自在にスイッチングするというスピン軌道トルクの新しい使い方を提案するものです。

 

 

本成果は、2017年4月11日(英国時間)に、英国科学雑誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」のオンライン版に掲載されました。なお、本研究は科研費若手研究(A)、基盤研究(S), 特別推進研究および村田学術振興財団の助成を受けて実施されました。

 

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Scientific Reports : http://www.nature.com/articles/s41598-017-00962-7

日本経済新聞 : http://www.nikkei.com/article/DGXLRSP442028_Q7A410C1000000/