プレスリリース

2016.07.11

酸化物界面を用いたスキルミオン制御 -界面作製技術による低消費電力エレクトロニクスに向けて- :物理工学専攻 十倉好紀教授、川﨑雅司教授ら

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの松野丈夫専任研究員、川﨑雅司グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)らの共同研究グループ※は、原子レベルで制御可能な酸化物界面において磁気スキルミオン(スキルミオン)を生成することに初めて成功し、スキルミオン設計の新たな指針を見出しました。

スキルミオンは、数ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)~数百nmの大きさの渦状の磁気構造体です。スキルミオンは固体中で安定な粒子として振る舞い、低い電流密度で駆動できるなど、磁気メモリとしての応用に適した特性を多く持つことが分かってきました。スキルミオンの生成には、強磁性体のスピンに“ひねり”を加える必要があります。そのために有望だと考えられている機構の一つがジャロシンスキー・守谷相互作用で、数nm~100nmと小さいスキルミオンを生成することができるからです。しかし、薄膜などではないバルク物質(塊の状態)でジャロシンスキー・守谷相互作用を実現するには、特殊な対称性を持つ結晶構造が必要とされるため、スキルミオンを用いたデバイスをバルク物質で設計するのは難しいという問題がありました。

今回、本共同研究グループは、バルク物質を使わず、多くの磁性体で普遍的にスキルミオンを生成する原理の開拓を目指し、二種類の酸化物SrRuO3とSrIrO3からなる高品質な積層界面構造を作製しました。界面では空間反転対称性の破れから、ジャロシンスキー・守谷相互作用が期待されるためです。本研究では、強磁性体SrRuO3の膜の厚さ(膜厚)を変化させながらホール抵抗を測定したところ、強磁性体が極めて薄いときにのみトポロジカルホール効果を観測しました。この観測は、単純な強磁性から変調された磁気構造、すなわちスキルミオンが実現していることを意味します。また、界面を考慮したモデルを用いて磁気構造の安定性を計算したところ、膜厚依存性を含めた実験結果とよく一致し、界面由来のジャロシンスキー・守谷相互作用がスキルミオン生成に有効な設計指針となることを明らかにしました。

本成果は、今後、スキルミオンを用いた低消費電力デバイスである磁気メモリへの応用が期待できます。

本研究は、米国の科学雑誌『Science Advances』(7月8日付け:日本時間7月9日)に掲載されます。

 

 

プレスリリース本文: /shared/press/data/setnws_20160711171228370789797064_336626.pdf

Science Advances URL: http://advances.sciencemag.org/content/2/7/e1600304.full