プレスリリース

異なる原子の光格子時計を短時間で比較することに成功 -周波数比の高速かつ超精密な測定は新しい物理への窓を開く- :物理工学専攻 香取秀俊 教授

 

JST 戦略的創造研究推進事業において、東京大学 大学院工学系研究科の香取 秀俊 教授(理化学研究所 主任研究員)、理化学研究所のNils Nemitz(ニルス・ネミッツ)国際特別研究員らの研究グループは異なる原子を用いた光格子時計を世界最高精度かつ短い計測時間で比較することに成功しました。
光格子時計は、現状で最も精度よく時間を計測することを可能にする原子時計の一種であり、次世代の時計として世界中で高精度化を目指して開発が進められています。高い精度で時間を計測できていることを確認するには、同等以上の精度の2台の原子時計で比較することが必要ですが、従来は計測に数カ月もの時間がかかっていました。
本研究グループは、イッテルビウム原子とストロンチウム原子を「魔法波長」で作られた光格子の中に捕獲・計測する光格子時計の手法を使って、計測時間を大幅に短縮して周波数を比較することに成功しました。この結果、国際単位系の1秒の実現精度をはるかに上回る5x10-17の不確かさで周波数比を決定し、これまでの異なる原子時計比較の精度の最高記録を更新しました。加えて、光格子時計の安定性をさらに向上させたことにより、これまでの最速計測時間より90倍も速い150秒で2台の時計の比較を実現しました。
このような異種原子時計の超高精度な比較は、物理定数の恒常性の検証を可能にし、素粒子の標準理論)を超える新しい物理の解明に役立つと期待されます。
本研究は、内閣府 最先端研究開発支援プログラムおよび文部科学省 先端光量子科学アライアンスにより一部支援を受けて行われました。
本研究成果は、2016年2月29日(英国時間)発行の英国科学誌「Nature Photonics」に掲載されます。

 

 

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Abstract URL:https://www.nature.com/articles/nphoton.2016.20