プレスリリース

複数酵素活性を同時に可視化できる activatable 型ラマンプローブの開発:電気工学専攻 寿 景文 D2、小関 泰之 准教授ら

 

光で分子振動を検出するラマン顕微法は、特にラマンプローブと組み合わせることで、蛍光法と比べて高い多重検出能を実現できることから近年注目を浴びています。しかし、既存のラマンプローブは常に信号を示す always-on 型のプローブであり、生体内の分子と反応してラマン信号が off から on に変化する activatable な特性を有するラマンプローブは開発されていないため、その応用が限定されていました。
東京大学大学院医学系研究科の神谷真子准教授、同大学院工学系研究科の小関泰之准教授らの研究グループは今回、epr-SRSを原理とする activatable 型ラマンプローブの開発に成功しました。本プローブでは、分子の吸収波長によって検出感度が変化することを利用して、標的酵素との反応前は吸収波長が短いためラマン信号が off ですが、反応後は長波長化してラマン信号が on となるよう分子を設計しました。さらに、ラマン検出タグである CN 基を同位体置換することで、同時検出が可能な 4 種類のラマンプローブを開発し、2 種類の生きた培養細胞間における酵素活性パターンの違いを可視化することに成功しました。
本研究で創出した、分子の吸収波長に基づくラマン信号の制御原理は、機能性ラマンプローブの分子設計において一般化され得るものです。この設計法に基づいて更なる機能性ラマンプローブが開発されれば、ラマン顕微法の多重検出能を活かした生命科学研究の大きな発展が期待できます。



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日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP600567_U0A121C2000000/