プレスリリース

スキルミオン結晶の崩壊と再結晶化を直接観察-次世代スピントロニクス応用への一歩-

 

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター電子状態マイクロスコピー研究チームの于秀珍(ウ・シュウシン)チームリーダー、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、東京大学大学院工学系研究科の横内智行博士課程3年生(研究当時)らの共同研究グループは、直径約1万分の1ミリサイズの磁気渦「スキルミオン」の熱力学的非平衡状態を、ローレンツ電子顕微鏡を用いて直接観察することに成功しました。
本研究成果は、次世代スピントロニクスの一つ、スキルミオンを用いた低消費電力の磁気メモリ素子などの実現に寄与すると期待できます。
今回、共同研究グループはまず、らせん磁性体である鉄ゲルマニウム(FeGe)の薄片に外部磁場を加えながら、室温(27℃)から極低温(-267℃)まで急冷することで、スキルミオン結晶(六方晶系)を凍結させ、非平衡状態にしました。凍結されたスキルミオン結晶は非常に安定で、外部磁場をゼロにしても六方晶系の形を保ちました。この結晶に外部磁場を加えたところ、一部のスキルミオンが蒸発し、結晶中にランダムな欠陥ができました。さらに、磁場を強めるとやがてスキミルオンはばらばらになり、結晶は崩壊しました。また、磁場を弱めると、ばらばらだった孤立スキルミオンは再結晶化され、スキルミオン結晶とコニカル磁気構造の混在構造に変化することが分かりました。
本研究は、国際科学雑誌『Nature Physics』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(5月28日付け:日本時間5月29日)に掲載されます。

 

 

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Nature Physics:https://www.nature.com/articles/s41567-018-0155-3

理化学研究所:http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180529_1/