プレスリリース

超低消費電力LSIを可能にする新構造トランジスターを開発 ~ 量子トンネル効果を駆使、IoTの電池寿命を大幅に延長~

 

JST 戦略的創造研究推進事業において、東京大学 大学院工学系研究科の高木 信一教授らは、極めて小さな電圧制御で動作が可能な量子トンネル電界効果トランジスターを開発しました。IoTやモバイル端末のさらなる低消費電力化と電池寿命の延長のため、これまでのMOS型トランジスターに代わる、新たな物理現象を動作原理に用いた革新的なトランジスターの開発が望まれていました。本研究グループは、従来の大規模集積回路(LSI)に用いられるSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)と、主にディスプレイなどに使用される酸化物半導体とを組み合わせたトンネル電界効果トランジスターを初めて実現しました。すでに広く実用化されている材料同士の組み合わせは、現在の半導体製造工程の活用と早期の実用化を視野に入れた、新しい発想です。素子構造の最適化と材料の組み合わせにより量子トンネル効果を効率よく引き起こすことで、ゲート電圧のわずかな変化で極めて大きな電流変化を実現し、素子のオン状態とオフ状態との電流比を世界最高値にまで引き上げることに成功しました。このトランジスターは、従来の半分以下の低い電圧で動作可能なほか、極めて小さな待機時消費電力が達成されます。そのため、さまざまなモバイル端末の省電力化や環境発電と融合したバッテリー不要な集積回路の実現など、新たな応用展開が期待されます。
本研究成果は、2017年12月3日(米国西部時間)に国際会議International Electron Device Meeting(IEDM)で発行される「Technical Digest」に掲載されます。

 

 

 

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科学技術振興機構(JST):http://www.jst.go.jp/pr/announce/20171204/index.html