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2018.09.07

【若手研究者紹介:008】応用化学専攻 野地研究室 田端和仁講師

学歴
2001年 金沢大学大学院自然科学研究科修了(博士(理学))

職歴
2002年-2005年 東京大学生産技術研究所 研究員
2005年-2011年 大阪大学産業化学研究所 助教
2011年-2014年 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 助教
2011年-2016年 科学技術振興機構さきがけ研究員 兼任
2014年-現在 東京大学大学院工学系研究科 講師
2015年-現在 内閣府ImPACTプログラム プログラムマネージャー補佐 兼任

<研究について>
私たちの生活は多くの微生物によって支えられています。味噌や醤油、酒と言った身近な発酵食品や汚水の浄化、医薬品の生産にも微生物は活用されています。このような有用な微生物は目的の機能を持った微生物を世界中から探して利用しています。全世界の微生物の総量は1030匹(人間は109人)と天文学的な数が存在しており、その中から目的の微生物を見つけることはまさに宝探しと同じです。また、微生物の95%は培養ができないといわれており、そのままでは使えないことがほとんどです。これら微生物の中には現在知られている化学反応では合成できないような有用な物質を合成したり、環境から効率的にエネルギーを取り出すことができるような微生物もいるかもしれません。そのため、将来的には目的の機能を持った微生物を安全な形で利用できるように作るという技術が必要になってきます。そこで私は微生物を再構成する(作る)技術の開発に取り組んでいます。微生物を作ることを考えた場合、その大きさが問題になります。多くの微生物は数マイクロメートルの大きさしかありません。つまり、数マイクロメートルの容器の中で作る必要があると言うことです。そこで、私は光リソグラフィーという技術を利用し、微生物と同じぐらいの大きさを持つ容器(マイクロチャンバー)を作成しました。このマイクロチャンバーに微生物の細胞膜と同じ脂質二重膜でフタをし、微生物を融合させることで、微生物とマイクロチャンバーが融合したhybrid cellを作成しました。これは、無機物であるマイクロチャンバーと生物である微生物が融合した状態ですが、hybrid cellは遺伝子からタンパク質を発現できる能力があることがわかりました。また、マイクロチャンバーに脂質二重膜でふたをするまえに、さまざまなものを入れることができることがわかりました。将来的には、人工的に作成した微生物のゲノムを入れることで新しい微生物を作る方法につながることを期待しています。
図a マイクロチャンバーデバイス 
ガラス上に作られたマイクロチャンバー。直径は4µm、深さ2µm。
図b マイクロチャンバーと微生物の融合(hybrid cell) 
マイクロチャンバーに緑色の蛍光色素を閉じ込め、微生物には赤色の蛍光タンパク質を発現させている。2つの融合が起きると2色が重なり黄色く見える(merge)。
参考文献: Moriizumi, Y.; Tabata, K.V.; Watanabe, R.; Doura, T.; Kamiya, M.; Urano, Y.; Noji, H. Hybrid cell reactor system from escherichia coli protoplast cells and arrayed lipid bilayer chamber device. Sci Rep 2018, 8, 11757.


<今後の抱負>
微生物をデザインして作るという試みは大きく社会を変える研究になると考えています。そして、この分野はまだ若くこれから伸びていく分野です。そのため、様々なバックグラウンドを持った人がこのような研究に参加し、社会や文化といった人文領域にまで広がっていけばいいと考えています。私も、その一翼を担えるように頑張っていきたいと思います。

野地研究室:http://www.nojilab.t.u-tokyo.ac.jp