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2018.07.27

【若手研究者紹介:003】航空宇宙工学専攻 中須賀・船瀬研究室 船瀬 龍准教授

経歴

2007年、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程を修了、博士(工学)を取得し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)にて深宇宙探査機の研究開発に従事。2012年より、東京大学大学院工学系准教授

<研究について>
我々の住む太陽系は、未知のフロンティアの宝庫です。これまで世界中の宇宙機関が無人探査機を飛行させ、様々な惑星や小惑星・彗星などを探査してきました。しかし、実施する探査が高度になるにつれ、国家レベルで行われるプロジェクトは大型化し巨額になる傾向があり、思うような頻度で探査を行うことが難しくなっています。 
我々の研究室は、電子回路・デバイス等の最先端技術を宇宙機へ適用することで、地球から数千万km離れた深宇宙を自力で航行できる探査機を、従来より2桁以上低コストで、1桁以上小型軽量(数10kg)に実現することを目指しています。探査機の開発は、東大の研究室の中で行われていて、教職員・学生が一丸となってこれまでにない探査機の実現に向けて研究開発に取り組んでいます。
2014年には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で、本格的な深宇宙探査機としては世界最小の、65kgの探査機PROCYON(プロキオン)の開発・打ち上げに成功しました(注1、図1)。PROCYONは、地球から6千万kmも離れた深宇宙へ飛行し,地球を覆う水素大気の発光現象の観測(注2)や、チュリモフ・ゲラシメンコ彗彗星周辺に吹き出す水素ガスの観測に成功し、彗星から吹き出す水の量の評価に貢献しました(注3)。
現在は、PROCYONよりもさらに探査機を小型・軽量化することに取り組んでいます。月のラグランジュ点(注4)へ飛行し、地球の磁気圏の撮像、月面衝突閃光(月面へ飛来する隕石による発光現象)の観測などを行う、重量11kg程度,大きさ30cm以内の超小型探査機EQUULEUS(エクレウス)を開発しています(注5,図2)。EQUULEUSは、JAXA、NASAとの協力により2019年の打ち上げを予定しています。
このように深宇宙探査をより高頻度・低コストに実施できるようにすることにより、太陽系の惑星や生命に関する人類の知見のさらなる拡大・発展が期待されます。


図1 超小型探査機PROCYONの開発風景


図2 超小型探査機EQUULEUSの開発風景


※注1
「世界初の超小型深宇宙探査機の研究」により,平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞しました(下記HP参照)。
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/soe/topics/setnws_20170419173931984058490498.html

※注2
立教大学プレスリリース(2017年12月8日):
『24万km以上まで広がる地球水素コロナの撮像に世界で初めて成功
超小型深宇宙探査機「PROCYON」に搭載された望遠鏡「LAICA」』
http://www.rikkyo.ac.jp/news/2017/12/mknpps0000008601.html

※注3
国立天文台プレスリリース(2017年1月24日):
『超小型探査機が彗星の水のなぞを解明』
https://www.nao.ac.jp/news/science/2017/20170124-procyon.html

※注4
地球と月の重力が釣り合い、探査機を安定的に留めることができる点.地球・月周辺には5箇所存在し、そのうち地球から見て月の裏側に位置するL2点へEQUULEUSは向かいます。

※注5
『ISASニュース』2017年10月号参照:
http://www.isas.jaxa.jp/outreach/isas_news/files/ISASnews439.pdf

 


<今後の抱負 >
多数の探査機が太陽系を(いずれは太陽系外にも?)飛行するような世界を実現し、それによって得られた成果で世界中の人々をワクワクさせたいと思って研究に励んでいます。


研究室HP:
http://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/

EQUULEUS(現在開発中の超小型探査機)のHP:
https://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/equuleus/