プレスリリース

2015.08.10

磁性体が乱れによって量子スピン液体に生まれ変わる:物理工学専攻 鹿野田 一司 教授 等

結晶中の電子やスピンは高温では熱的なゆらぎにより無秩序状態を示しますが、低温になると磁気秩序、超伝導などさまざまな秩序化現象を示すことが広く知られています。このような秩序化現象に対して、結晶中の欠陥などに起因する乱れの効果は秩序化を曖昧なものにする場合が多く、電子状態の研究においては邪魔な存在だと多くの場合考えられてきました。一方で、電子同士が強く相互作用する電子集団においては、乱れの効果がどのような形で現れるかはよくわかっていませんでした。

今回、東京大学大学院工学系研究科の古川哲也学術支援専門職員(研究当時)、宮川和也助教、鹿野田一司教授、東北大学金属材料研究所の佐々木孝彦教授らを中心とする研究チームは、分子性結晶の磁性体にX線を照射することによって乱れを導入した結果、結晶がもともと示していた反強磁性磁気秩序が絶対零度に近い340 mKという極低温まで消失していることを核磁気共鳴実験により明らかにしました。この結果は、強く相互作用する電子集団に乱れを導入することで、量子スピン液体状態を生み出すことに初めて成功したことを意味します。本研究は、現在世界中で盛んに研究されている量子物質や量子液体相を乱れによって発現させるという、これまでにない物質相の探索方法を提示するものです。

本研究は、東京大学、東京理科大学、埼玉大学、東北大学の共同研究として行われ、米国科学誌「Physical Review Letters」(オンライン版 2015 年 8 月 10日付、雑誌版 8 月14 日付)に掲載される予定です。

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