プレスリリース

2017.08.28

鉄系超伝導体における新しい電子構造の発見-超伝導と共存する未知の秩序相-:物理工学専攻 下志万貴博助教(研究当時)、石坂香子准教授、物性研究所 辛埴教授ら

東京大学大学院工学系研究科の下志万貴博助教、石坂香子准教授と東京大学物性研究所の辛埴教授らは、鉄系超伝導体において、超伝導が発現する温度の近傍で出現する新しい電子秩序相を発見しました。また本秩序相は超伝導を阻害しない共存関係にあることも分かりました。超伝導は物質を超伝導転移温度(Tc)以下に冷却すると電気抵抗が消失する現象です。ゼロ抵抗(電気抵抗が消失する現象)という性質を活かした強力な電磁石は磁気浮上式リニアモーターカーや核磁気共鳴画像法として既に応用されています。もし室温程度で超伝導が実現すれば、エネルギー損失のない送電線などの利用が期待されており、Tcを高めるための研究が行われています。2008年に発見された鉄系超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体に次ぐ高いTcを示す物質群として基礎科学そして応用面からも注目されてきました。室温に迫る高いTcを実現するためには、超伝導を担う電子の構造を詳細に調べる必要があります。

本研究では、エネルギー分解能に優れたレーザー光電子分光法(注1)を用いて鉄系超伝導体Ba1-xKxFe2As2における電子のバンド構造(注2)を観測し、超伝導と共存する新奇な電子秩序相の存在を明らかにしました。今後、本研究成果を基に、鉄系超伝導体の複雑な超伝導機構の理解、さらにはより高い超伝導転移温度を示す物質の探索に結び付くことが期待されます。

本研究成果は2017825(米国東部時間)に米国科学誌「Science Advances」で公開されます。本研究は、科学研究費基盤研究(S)(No. 25220707)、科学研究費基盤研究(B)(15H03687)および文部科学省「光・量子融合連携研究開発プログラム」、「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」の助成を受けました。

 

プレスリリース本文:/shared/press/data/setnws_201708281019074737077770_895550.pdf

Science Advances:http://advances.sciencemag.org/content/3/8/e1700466.full