プレスリリース

2016.08.01

なぜ高温超伝導体は界面で優れた特性を持つか? ― 銅酸化物界面で超伝導転移温度が安定に最適化される機構を解明:物理工学専攻 三澤貴宏助教(研究当時)、今田正俊教授ら

 常圧で最高の転移温度を持つ銅酸化物高温超伝導体が1986年に発見されて以来、全世界で精力的な研究が続いていますが、現在でもその機構は十分には解明されていません。一方で超伝導体の薄膜や界面は通常のバルク物質の結晶とは異なる性質や制御性を示すことから、機構解明にも相補的な知見をもたらすと期待され、また独自の応用の可能性も期待されています。しかし純良な薄膜や界面の作製は高度の作製技術を要し、困難でした。ようやく近年、実験技術の進歩によって、2種類の電子濃度を持つ銅酸化物高温超伝導体を張り合わせた構造の上質界面が作製されましたが、驚くべきことに、この界面では超伝導転移温度がキャリア濃度に全く依存せず、バルク結晶とはまったく異なる安定して優れた性質を持つ結果が報告されました。
 東京大学物性研究所の三澤貴宏特任研究員 (研究当時 東京大学 大学院工学系研究科助教)、東京大学工学系研究科物理工学専攻今田正俊教授、エコール・ポリテクニーク(フランス)野村悠祐博士研究員およびジルケ・ビールマン教授が、スーパーコンピュータ「京」を駆使して行なった界面の大規模シミュレーションは、この実験を再現するのみならず、界面では超伝導転移温度が自動的に最適化され、キャリア濃度を変えても固体の場合の最高転移温度に保たれることを見出し、謎であった現象の起源としくみの解明に成功しました。発見した機構をもとに、最適化が難しかった物質群に対し、今後より安定で高い転移温度の超伝導体をデザインする研究の活発化が期待されます。
本研究成果は、米国の科学雑誌「Science Advances」のオンライン版に2016年7月29日(日本時間7月30日)に掲載されます。

 

プレスリリース本文: /shared/press/data/setnws_20160801104150830990252730_785959.pdf

Science Advances URL: http://advances.sciencemag.org/content/2/7/e1600664.full