イベント

2018.04.19

【開催報告】ワークショップ「エネルギー」& 研究室見学会 3月30日

東京大学大学院工学系研究科 社会連携・産学協創推進室
ワークショップ「エネルギー」& 研究室見学会

2018年3月30日(金)13:00~16:00、東京大学本郷キャンパス工学部8号館教授会室において、ワークショップ「エネルギー」を開催いたしました。また、ワークショップに引き続き、16:15~18:30、研究室見学会を開催いたしました。
ワークショップでは主催者を代表して大久保達也研究科長より挨拶があり、東大と企業との共同研究は従来先生方の個人的なつながりからできたものが多かったが、このつながりをさらに強化するために社会連携・産学協創推進室を昨年設置したこと、今回のテーマである「エネルギー」にはほとんどの専攻が関与しており、SDGsの一つでもあることを紹介され、更に、ワークショップ終了後には研究室見学会を設けており、実り多きイベントになることを期待していると述べられました。
引き続き、東京大学内のエネルギー関連研究を先導しておられる9名の先生方に講演をいただきました。

原子力国際専攻の藤井康正教授は「最適電力系統モデルによる自然変動電源大量導入施策の分析」と題して、1時間間隔の電力系統モデルを例に、再生可能エネルギーの導入比率が増えすぎると使えずに捨てるエネルギーが増えてくることを説明され、これからの課題として、余剰電力による水分解で得た水素のその場での活用方法、エネルギーのデジタル化、AIによる取引、新電力システム、パルス送電による高速取引、等々を紹介されました。現在、分散高速取引市場、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)を手掛けているが、今後、企業等と連携できることを期待していると述べられました。

人工物工学研究センターの増田昌敬教授は「資源開発における新しい価値創成-メタンハイドレートとデジタルオイル技術」と題して、メタンハイドレートは水とメタンの合成物で、地中から10%回収出来たら39~140年分のエネルギー源になること、メタンハイドレートには表層型と砂層型があり、砂層型の東部南海トラフから天然ガス10年分をどう取り出すかを研究中であること、経済産業省のMH21コンソーシアム事業では減圧法により20日間連続運転で24万m3を抽出した研究実績を説明され、デジタルオイルの構築に向けての分子動力学によるシミュレーションやシェールガス中のエロージョンを分子動力学でシミュレーションした事例を紹介されました。

社会基盤学専攻の石原孟教授は「洋上風力発電の最新動向と将来展望」と題して、「次世代風力発電システムの創成寄付講座」で実施した国家プロジェクトでの実証事業、国内・国際基準の作成等について説明され、日本型洋上風力発電システム(着床型)が福島沖で2018年4月1日より商用運転(東京電力)にはいること、水深100数10m~200mに建てる技術をベースに開発中の浮体式洋上風力発電システムも来年度には商用運転を開始する予定であること、日本の風力発電においては風の扱いに特に注意する必要があることを紹介されました。2011年から2015年までの5年間、日本では風力発電への投資額がほぼ同額であるが発電量は伸びており、EUにおいては投資額も増えて発電量は激増し、最早、風力発電が台頭していると述べられました。

機械工学専攻の丸山茂夫教授は「ナノカーボン材料を用いたペロブスカイト型太陽電池」と題して、ペロブスカイト型の太陽電池は2009年に論文が発表され、2013年からはNEDO-PJにおいてこのペロブスカイト型の材料をカーボンナノチューブやフラーレンで挟んだ構造の太陽電池を研究していることを説明され、フラーレンの中に金属を取り込むような今後の研究構想も紹介されました。Si(太陽電池)や風力に関する欧米の動きには政治的な色合いがかなり含まれていることを承知しておく必要があると述べられました。

化学システム工学専攻の山田敦夫教授は「安全・安心な高性能蓄電池の社会実装に向けた材料開発」と題して、二次電池は中国やEUで国策の後押しも得て著しい勢いで伸びているが、今後の産業応用においては大きな二次電池が必要で、安全性、コスト、信頼性などが大きな壁になっていると説明され、山田研究室で開発された、燃えない、分解しない、揮発しないという特徴を有する濃厚電解質(液体系有機電解質)について紹介されました。現在、企業と共同研究中で間もなく商品化される予定と述べられました。

技術経営戦略学専攻の阿部力也先生は「デジタルグリッドの全体像と産学連携活動の一事例」と題して、アフリカの無電化地帯への電力供給から始め、ベンチャー企業を立ち上げてこられ、ご自身も大学を退職されて企業に移られたとの経緯を説明され、電力消費量が発電量と同じ(同時同量)なら電力系統を通っても系統内部の調整が不要になるのでダイレクトな取引が可能になることを紹介されました。多くの企業との連携を踏まえた産学連携の成果であり、今後は弱電化地帯の電力安定化を目指したいと述べられました。

機械工学専攻の鈴木雄二教授は「IoTデバイスのためのエレクトレットを用いたエネルギーハーベスティング」と題して、環境発電はコストがグリッドの3000倍にもなる世界であるが、環境負荷が少ないのが魅力で、振動発電について最新の研究をセンサー応用、エレクトレット材料、電荷の打込み技術等を例に紹介されました。今は機械産業で活用されているが、輸送産業からヘルスケア産業へ、あるいは、社会基盤産業からコンシューマ産業への展開を期待していると述べられました。

建築学専攻の赤司泰義教授は「建築・地域におけるエネルギーシステムの省エネ運用技術」と題して、建築業界は一品作り込みの世界で10年がかりで根気強くやればエネルギー消費が±10~20%の差が出る程度の世界、ビル管理のデータは監視と保存のみに使われ、ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)のデータは信頼性に不安があるので深層学習にならないなどビルの省エネにおける技術課題が紹介されました。地域熱供給プラントや建築運用管理が長期にわたる課題であり、今後の狙い目はセンシングとそれに関連付けた省エネルギー対策に期待できそうだと述べられました。

電気系工学専攻の松橋隆治教授は「エネルギーシステムの脱炭素化施策の設計と実装」と題して、CO2削減に関する政府長期ビジョン「2080年までに80%削減」を実現するには、バックキャスティングでエネルギーミックスをどうするのか、発電と送変電を分離した電力システムの改革と系統安定性を考える必要があると説明され、太陽光発電の爆発的な増加や原子力発電の再稼働を想定して系統のインバランスを二次電池や水素で吸収するようなエネルギー事業での雇用確保による社会貢献を紹介されました。更に、深い専門知識による総合的アプローチと取引制度の設計・革新による全国イノベーションを期待すると述べられました。また、エネルギーの問題は多岐にわたり、相互に関連するので研究者間の横の連携が必要で、大久保研究科長のクラスター構想に期待したいと述べられました。

ワークショップ終了後、16:15~18:30、研究室見学会を開催し、17研究室をご覧いただきました。対応していただいた研究室は社会基盤学専攻の石原/山口研究室、機械工学専攻の塩見/児玉研究室、鈴木/森本研究室、高木/杵淵研究室、丸山/千足研究室、電気系工学専攻の日高/熊田研究室、システム創成学専攻の和泉研究室、加藤/中村研究室、化学システム工学専攻の大久保/脇原研究室、堂免/嶺岸研究室、山田/大久保研究室、原子力国際専攻の高橋研究室、藤井/小宮山研究室、バイオエンジニアリング専攻&電気系工学専攻の田畑/松井研究室、技術経営戦略学専攻の田中研究室、総合研究機構・先端ナノ計測センターの柴田研究室、人工物工学研究センターの増田研究室の各研究室です。
来場者は66名、うち企業から50名と多数の方々に参加していただきました。
皆様方からのご意見を反映させ、工学系研究科 社会連携・産学協創推進室では、今後も産業界からの要望に応えるべくシンポジウム、ワークショップなどを企画していく所存です。

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