学部長あいさつ

学部長あいさつ

大久保 達也

工学が未来を切り拓く 工学部長 大久保達也

明治維新により日本は近代化の第一歩を踏み出しました。西洋の知識や制度、技術を導入し、「坂の上の雲」を目指した時代です。東京大学工学部は、1886年(明治19 年)に東京大学工芸学部と工部大学校の合併により、帝国大学工科大学として誕生しました。現在は国際的に常識になっている総合大学に工学部を設置する世界で最初のモデルでした。西洋の科学技術を導入、人材を育成し、「殖産興業」の時代の中核を担いました。第二次世界大戦の終了により、現代の日本がスタートしました。工学部は技術開発、人材育成を通し、「戦後復興」の時代、そして「高度成長」の時代を牽引しました。これらの中でエネルギー問題や環境問題が発生しましたが、その対応の中から、世界に冠たる省エネルギー技術、環境技術が開発されてきました。今日、エネルギー、環境、情報、知能、健康・医療等も工学の対象となっています。当初工学は「もの」づくりのための学問として出発しましたが、その後の工学の対象は「もの」づくりから、広く「こと」づくりへと拡がってきたことがわかります。

2015 年国際連合は「持続可能な開発サミット」を開催し、持続可能な開発アジェンダを採択し、2030年までに達成すべき17ゴールと169ターゲットからなる持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)を策定しました。これらの目標の中で工学の貢献なしに達成できるものはありません。今日においては、「社会」やその「未来」を工学の対象にすることが求められているのです。

工学は基礎科学の問題から科学技術全般・社会全体にまたがる課題までを取り扱う広大な学問体系を有しています。そのため、工学を学んだ者は様々な課題に取り組むことが可能となるのです。現代の社会の抱える課題は複雑で、多くの分野が関わっています。例えば、エネルギー、環境、資源、水、食糧等の問題は相互に絡み合い、複雑な様相を呈しています。ひとつの対策技術が他の問題を引き起こす例は枚挙に暇がありません。こういった課題に取り組むためには、深い専門性と幅広い視野をあわせ持つことが不可欠です。

工学部は、基礎科学の発展と深化を先導する分野、産業を強化しイノベーションを主導する分野、新たな複合・境界・融合領域を切り拓く分野等、多様で多彩な分野から構成されています。我々は個々の学問分野を深化させるとともに、相互に強く連携して自然界や社会に発生するさまざまな課題に取り組んでいます。工学部に所属する16 学科では、各々の特徴を踏まえ、深い専門性と幅広い視野を養うための体系的な教育が行われています。

加えて、工学部では学科を越えた様々なプログラムを通して、国際的なコミュニケーション能力や社会に出てから必要となる素養、高い倫理観を涵養する機会も用意されています。

工学で学んだ皆さんが、未来を切り拓く最前線を担い、活躍されることを期待しています。

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