「工学」それは意思を実現する体系

脳脊髄神経系へのメッセンジャーRNA(mRNA)送達 -新しい核酸医薬としてのmRNA治療応用に向けたデリバリーシステム開発- : マテリアル工学専攻 片岡一則教授Japanese Page

2013/02/15

脳や脊髄などの中枢神経系疾患は,根治的治療が困難な難治疾患の代表例です.mRNAは神経細胞で効率よく目的とするタンパクを産生させる機能を持ち,新しい核酸医薬として治療への応用が期待されるものですが,mRNAは極めて不安定で生体内では急速に分解されてしまうこと,また自然免疫機構を刺激して,生体内で強い炎症反応を引き起こすことから,これまでmRNAの治療への応用例はほとんどありませんでした.

本研究は,このmRNAによる新しい中枢神経系疾患への治療実現に向けて,東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻/東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター臨床医工学部門の片岡一則教授・位髙啓史特任准教授の研究グループにより,高分子ミセル型ドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いた,mRNAの中枢神経系への安全な送達・機能発現に世界で初めて成功したものです.

本研究では,mRNAを内包させた高分子ミセルを脳脊髄組織へ投与することにより,5日間に渡る持続的なタンパク発現を得ました.このmRNAによる長期持続性機能発現における高分子ミセルの働きとして,mRNAを安定に保持することに加え,自然免疫機構に認識されることを防ぎ,炎症反応の発生を抑えることを明らかとしました.本システムによる安全・実用的なmRNA送達の実現により,アルツハイマー病,脊髄損傷といった難治性の中枢神経疾患・外傷に対して,画期的な新規治療法の開発に繋がることが期待されます.

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